(令和7年12月8日提訴)

【被告】   岡山県 (代表者 知事 伊原木隆太)

【事件番号】 令和7年(ハ)第127号  (津山簡易裁判所)

       令和8年(ワ)第12号   (岡山地方裁判所津山支部)

       控訴済           (広島高等裁判所岡山支部)

事件概要

この事件は、令和7年9月7日、鏡野多目的屋内運動場(かがみのドーム)の近辺にて、原告が政治活動を行っていたところ、岡山県警津山警察署の警察官複数名が、原告の政治活動を妨害・制止した事件である。

事件の詳細は訴状に記載しています。

事件後の経過

原告は、岡山県警が政治活動を制止・妨害した行為に対し憤りを感じていたので、事件翌日(令和7年9月8日)に苦情申出書を岡山県公安委員会に発送した。

令和7年12月1日に、岡山県公安委員会より原告あてに「問題が認められない」との通知文を受領した。

(以上までは、「岡山県公安委員会に対する苦情申立書」の項目に記載)

このままでは納得いかないとの判断で、令和7年12月8日に、岡山県を相手に、訴状を津山簡易裁判所に提出した。

訴訟後の主な経過

注)本事件に限っての記載にとどめる。他事件との時系列は、他の事件のページと比較してご覧ください。

令和8年2月19日 津山簡易裁判所民事1係 第1回期日

 原告が和解条件を提示したが、被告が断ったので、事件の内容を鑑み、岡山地裁への移送が決定した。

令和8年4月22日 岡山地方裁判所津山支部民事2係 第1回期日

 裁判所は、被告に対し、次回期日にあたり争点に沿った反論書を提出するように指示

令和8年6月26日 第2回期日(結審)

 被告反論書に対し、原告は反論しないとの宣言をしたため、結審した。

令和8年8月21日 判決

 裁判所は原告の請求を棄却した

令和8年8月24日 控訴

今に至る

訴訟等の資料

一部、分かりやすいように文言を修正、省略しています。


<訴状>

被告 岡山県(代表者 知事 伊原木隆太)

政治活動の妨害および名誉棄損による慰謝料請求事件

【請求の原因】

第一 当事者について

1.原告は、政治団体「かがやけかがみの」の代表者である。

2.被告は、原告が路上において政治活動を行っているのを違法に妨害した団体(組織)である。

第二 本件提訴に至る事情(請求の原因が発生した当日)

1.原告は、令和7年9月7日午前8時20分頃に岡山県苫田郡鏡野町竹田124にある鏡野多目的屋内運動場(以下「かがみのドーム」と書く、イベントが行われていた場所)近くの駐車場に車を停め、近辺を探索した。その際、イベント主催者が依頼した警備員は数名見かけたものの、警察官らしき人は見かけなかった。

2.原告は、午前8時45分頃,かがみのドーム」の入り口より南約100メートルの歩道上にて、政治団体「かがやけかがみの」の政治活動として,ポータブル拡声機(拡声機)を持参したポールで固定し,有線式のマイクを用い政治活動を行っていた。

3.当日イベントが行われていたかがみのドームは、側面のシャッター(写真で言うと,青いシャッター)が解放されており、会場内からスピーカーの音が洩れており、原告がいる場所 でも音が何となく分かる感じであった。

4.午前9時まで拡声機を用いて政治活動を行い、午前9時15分頃まで拡声機使わず、その後拡声機を用いて政治活動を再開した。説明を補足すると、午前9時から会場内でイベント開会の挨拶があることを公表していたため拡声機を使っておらず、会場内で挨拶が終わったことを確認して拡声機を用いた政治活動を再開した。加えて、午前9時30分からイベント会場内でアトラクションがあることを知っていたので、午前9時までの段階で拡声機にて,午前9時 まで拡声機を使うことと、午前9時30分に撤収することを言っていた。

5.同日、午前9時15分過ぎに,警察官らしき人がかがみのドームの入り口付近にパトカーを停車させ,原告に近寄り午前9時20分ごろに警察官らしき人と思わしき人より「今すぐ(政治活動)を止めろ」 と命令された。

6.原告は「誰が通報したんだ!」と拡声機で叫び、手を上で振ると(一般でいう「ガンバロー」とか言って手を挙げる感じで)、警察官らしき人は強引に体を抑え、強制的に演説を制止させ、有形力の行使 を行った。

7.その後、その警察官らしき人は「道路使用許可を取っているのか」とか「拡声機でお前とかいう言葉を使うような演説は政治活動じゃない」など意味不明なことを言い、反論しても一切聞く耳を持たなかったため、原告は「あんたらとは話にならないので喋らない」というようなことを伝え、警察官らしき人に対し刑事二課の人を呼んでくれと再三再四頼んだにも何ら対応しなかったため、同日午前9時28分に110番通報を行い、現場の警察官らしき人は政治活動のことが一切理解できておらずお話にならないので刑事二課の刑事をこちらに来させるよう依頼を行った。

8.7ののやり取りの間に警察官らしき人が集まり、最大で7名くらいに取り囲まれた。

9.午前9時50分頃、全く刑事二課の刑事もやってくる様子がなく、原告は相当恐怖に感じ、このままでは精神的に持たないと感じたため 「ここでの政治活動を止めるからもういいですか?」を伝えた上、警察官らしき人と合意しその場から離れた。

第三 本件提訴に至る事情(請求の原因が発生した翌日以降)

1.令和7年9月8日に、警察法第79条(苦情の申出等)および国家公安委員会規則第11号(苦情の申出の手続きに関する規則)に基づき、 苦情申出書を岡山県公安委員会に発送した。

2.1項の苦情申出書に基づき,令和7年12月1日に岡山県公安委員会より通知文を受領した。

3.原告は、2項の通知文において「問題は認められない」と被告が主張したため、本件提訴を行った次第である。

第四 不法行為

1.民法第709条の不法行為

原告の政治活動を演説妨害という手段で妨げることは、権利侵害行為となる。

2.民法第710条の不法行為

被告は原告に対し警察官らしき人に囲まれたことによる精神的苦痛、および110番通報をしても一切対応しなかったことに対する精神的苦痛を味わった。また、警察官らしき人に囲まれたときの写真はX(旧Twitter)に未だに掲載しており、現在でも精神的苦痛を受けている。

3.民法第723条の不法行為

 原告が被告に囲まれた様子を近隣のイベントに参加していた大勢の人に見られており、原告の名誉を棄損した。

4.警察官職務執行法第二条1項の違反

 警察官らしき人は、単に政治活動として街頭演説をしているにも関わらず、「犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」がないにも関わらず政治活動を制止させ職務質問を強要する行為は、警察官職務執行法第二条1項違反に当たる。

5.憲法第19条および憲法第21条違反

 原告は、近隣に人が集まっている(「鏡野町産業まつり」のため)ところから約100メートル離れ、イベントに支障が出ないよう配慮して政治活動を行ったにもかかわらず、被告は憲法を無視し原告の権利を妨害した。

第五 被告の主張

岡山県公安委員会の通知文を通じての被告の主張の概要は以下のとおりである。

1.政治活動の妨害について

A.当該職員が、現場において、貴方に政治活動を止めることを命令したり、政治活動を妨害した状況は確認されませんでした。

B.他社とトラブルになる可能性があった貴方の行動を制止した状況が確認されましたが、適正な職務執行であり、問題は認められませんでした。

2.110番通報をしたが取り合ってもらえなかった

通報に基づいた適切な対応を行っており問題は認められませんでした。

3.複数の警官に取り囲まれることで,精神的苦痛を受けた

直接対応する警察官らしき人を1人に絞っていたから、原告に配慮していた。

第六 被告の主張に対する原告の反論

1.第五-1項について

事情は第二項のとおりである。これが政治活動の妨害であり、被告の不当な職務執行であると主張する。

2.第五―2項について

被告の地域部通信指令課の対応は不知。それ以降の対応も不知。

原告が分かっている範囲では、午前9時50分頃まで最初に集まった最大7名くらいの警官らしき者以外の警官もしくは私服刑事らしき者は来なかった。

なお、この事件の翌日の午前中に、原告は近隣のイベントで津山警察署に相談したらしき人(観光産業振興課の職員)と鏡野町役場で事情を聞いている。

その職員が言うには、警察に相談したのは午前9時頃を聞いており(通報ではないんですねと念押しして聞いたら通報ではないと言っていた)、それが正しいとすれば近隣の津山警察署から15分以内で現場に到着していた。以上の理由から,被告の言い訳は明らかに矛盾していると推認される。

事件現場において警察官らしき人から「近隣住民から通報があった」という虚偽と思われる説明をしており、仮にイベント主催者以外に通報・相談があったとしても近隣の一般住宅まで最短で150メートル位の距離が離れており、またイベント会場からのマイクの音声が大きく、原告の発した音が大きかったのかイベント会場からの音量が大きかったのかは不明である。

3.第五-3項について

警官らしき者に囲われたのだから、そのときは恐怖以外感じることができなかった。

被告は、警察官らしき人1名からしか話していないとかいかにも原告に配慮しているような言い訳をしているが、現場で囲まれたら明らかに凶悪犯のような扱いであり、明らかに名誉棄損とも言える行為と言わざるを得ない。また,イベント参加者がSNSにおいて警察官らしき人に囲まれた掲載しており、多くのイベント参加者がその様子を見ていたことが分かる。

第七 被告の責任

近隣で人が集まるイベントがあることを知り、原告はイベントに支障が出ないよう、イベント会場入り口より約100メートル離れて政治活動を行った。

加えて、イベント会場で挨拶を行っている時間は拡声機を使わない配慮を行っており、イベント参加者に極力迷惑がかからないよう配慮して活動を行っていた。

にもかかわらず、被告は状況を一切確認せずほぼ一方的に政治活動を妨害し、原告の政治活動の機会を逸してしまった。

加えて、原告は政治活動に詳しい刑事二課の刑事を呼び,現場確認をした上で可否を判断して貰うつもりであったが(現に刑事二課に刑事さんに確認してダメだと言ったらすぐ撤収するとも被告と思われる警察官らしき人に伝えていた)、粘着質に警察官らしき人は政治活動に関して無知であることを知りながら、一方的に政治活動を止めさせようと原告を取り囲み制止・威圧した。

この事件以降、精神的苦痛により政治団体「かがやけかがみの」の街宣活動はほぼ停止し、街頭においてまともな政治活動が出来なくなった。

また、SNSにこの当時の写真が掲載されており、まるで原告が悪質な政治活動をした犯罪者のような扱いになっており、見る度に精神的苦痛を受けている。

同時に、この風景を見た近隣のイベント参加者は大勢おり、原告の社会的地位を著しく低下させた。

被告は明らかに意図的に原告の権利を侵害した上に名誉棄損も行っている。

これによる精神的を苦痛や名誉回復に対しての慰謝料も考えると,精神的苦痛等の損害を金銭として正確に算出することは非常に難しいが金30万円を下らない。

第八 結語

よって,被告は原告に対して,金30万円の支払いを求める。

以上、

証拠方法

甲第1号証  事件現場の位置関係 [作成者:Google社(付記は原告)]

甲第2号証  事件現場の様子 [作成者:Google社(付記は原告)]

甲第3号証  かがみのドーム(イベント会場)から見た事件現場 [作成者:X(旧Twitter)ユーザー]

甲第4号証  事件当時の写真 [作成者:X(旧Twitter)ユーザー]

甲第5号証  苦情申出書 [作成者:原告]

甲第6号証  通知文 [作成者:岡山県公安委員会]

甲第7号証  X(旧Twitter)の内容① [作成者:X(旧Twitter)ユーザー]

甲第8号証  X(旧Twitter)の内容② [作成者:X(旧Twitter)ユーザー]


<被告反論書>

令和8年2月5日

被告 訴訟代理人弁護士 板野次郎

   岡山市北区富田町二丁目6番15号

   板野法律事務所

第1 請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第2 請求の原因に対する認否

1 「第一当事者について」

(1) 1は認める。

(2) 2は否認ないし争う。なお、被告は、津山警察署の設置者である地方公共団体である。

2 「第二本件提訴に至る事情(請求の原因が発生した当日)」

(1) 第二の1

令和7年9月7日(日曜日)に、「かがみのドーム」でイベントが行われていたことは認める。原告の行動や認識は不知。

なお、イベントは合併20周年を記念した「2025鏡野町産業まつり」である。

(2) 第二の2

原告が午前8時45分頃に何をしていたかは不知。

原告が、かがみのドームの入口から南約10 0メートルの歩道上(以下「本件現場」という。)でポータブル拡声器(以下「拡声器」という。)をポールで固定し、有線式のマイクと拡声器を繋げて使用できるようにしていたことは争わない。

(3) 第二の3

かがみのドームの西側シャッターが開放していたために、ドーム内の音が漏れ、原告の位置まで到達していたかについては不知。

(4) 第二の4

イベント開会の挨拶が午前9時であること、同9時30分からアトラクションがあったこと、警察官が臨場する前に原告が拡声器を用いて演説を行ったことは認める。その余の主張は不知。

(5) 第二の5

否認する。

津山警察署かぐらお交番の警察官1名(以下「本件警察官」という。)は、午前9時23分頃にかがみのドーム.の入口付近にパトカーを停車させ、本件現場に徒歩で移動し、原告に職務質問を行ったが、原告に対し、「今すぐ(政治活動を)止めろ。」と命令したことはない。

(6) 第二の6

原告が「誰が通報したんだ。」と拡声器で叫び、手を上に振ったことは認める。

その際、本件警察官が強弓1に原告の体を抑え、強制的に演説を制止させるなどの有形力の行使を行った旨の主張は否認する。

(7) 第二の7

本件警察官が、原告に対し「道路使用許可は取っているのか。」、「お前とかいう言葉を使うような演説は政治活動じゃない。」と言ったこと、原告が、本件警察官に対し「あんたらとは話にならないので喋らない。」と言ったこと、本件現場で津山警察署の刑事第二課員を要請した後に110番通報したことは認める。

(8) 第二の8

通報に基づき警察官が本件現場に臨場したことは認めるが、その数は本件警察官を含めて最大6名であり、主な対応者は本件警察官である。警察官らと原告の位置関係が甲4のようになったことがあることは認める。

(9) 第二の9

刑事第二課員が本件現場に臨場しなかったこと、原告が本件現場を離れたことは認める。原告が現場を離れたのは午前10時5分頃である。

なお、原告の11 0番通報を受理した津山警察署は、刑事第二課員を含む宿直勤務員を本件現場に向かわせていたが、原告が立ち去った旨の無線通話を受けたため、引き返えさせている。

3 「第三本件提訴に至る事情(請求の原因が発生した日以降)」

1、2は認める。

4 「第四不法行為」から「第八結語」

争う。

第3 被告の主張

1 本件警察官らの職務執行は適法であること

(1) 臨場と職務質問について

津山警察署は、令和7年9月7日午前9時頃、「職員等に向けて声を荒げている男性がいる。」旨の通報を受理し、同9時4分頃、本件警察官らに現場臨場の無線指令を行った。

本件誓察官は、同9時23分頃、かがみのドームに臨場したところ、現地の警備員が原告を指示したため、通報の対象が原告であることを理解した。

本件警察官が徒歩で近づいたところ、原告は「政治活勁をしている。政治妨害になるぞ。」などと牽制したが、本件警察官は通報内容からけんか口論の可能性を認め、事実確認のため、警察官職務執行法2条1項に基づき、原告に職務質問を開始した。

原告は、質問に対し「私の母親は議員に自殺させられた。このことは警察へも相談に行っている。鏡野町をよくしようと思ってこうしたことをしている。」等と意図を説明した。

(2) 有形力の行使について

その後、本件警察官は、原告から通報者は誰かと問われ、「通報者については教えることができない。」と伝えたところ、原告は、興奮した様子で、

かがみのドーム方向に「お前らが通報したんじゃろ。都合の悪いことを言われたからじゃろ。」

と拡声器を通じて大声を上げ、本件警察官がたしなめると、原告は、拡声器を使わずに肉声で大声を張り上げ、かがみのドームに徒歩で向かおうとした。本件警察官は、イベント関係者との衝突を防止するため、原告の前に立ちはだかり、大声を出さないように警告した。

(3) 原告と警察官の位置関係について

前記第2の2 (8) のとおり、原告の対応者は本件警察官に限定し、その他の警察官は、原告と距離を保つように配意している。

(4) 刑事第二課員を臨場させる義務とその不履行について

刑事第二課員を臨場させる義務があったとは考えられないが、前記第2の2 (9) のとおり、原告の求めに応じて津山警察署の刑事第二課員らは本件現場に向かっていた。

しかし、到着する前の同午前9時56分頃から原告が撤収を開始し、本件現場から立ち去ったため、途中で中止した。

2 結語

本件現場における本件警察官らの一連の対応は、原告の特定の政治的主張や政治活動の内容を制限する意図で行われたものではなく、公共の安全と秩序を維持するためになされたものであり、手段も社会通念上相当な合理的なものであって、適法である。

また、原告の11 0番通報に係る要請に関しては、刑事第二課員を臨場させる義務はないうえ、本件現場に向かっていた同課員らが到着する前に原告が本件現場を離れてその要請を放棄したものであるから、いかなる意味でも違法ではない。

よって、原告の請求は理由がないことが明らかであるから、すみやかに棄却されるべきである。

以上

証拠方法

乙第1号証  チラシ(令和7年鏡野町産業まつりのもの) [作成者: 鏡野町産業観光課]

乙第2号証  選挙ポスター(令和7年鏡野町長選挙出馬時のもの)を撮影した写真 [作成者: 原告] 注)写真の作成者は原告ではない。

乙第3号証  X(旧:Twitter)投稿画面を印刷した書面 [作成者: 投稿者]


<原告第1準備書面>

令和8年  2月 12日

 被告(岡山県)の答弁書(令和8年2月5日作成)に対する原告の主張を述べる

第一.本訴訟の内容について

1.本訴の争点について

本訴の請求の根拠となる不法行為は、訴状訂正申立書(令和7年12月16日に裁判所に提出。以下「訂正訴状」と称す)の第四項(4頁18行目)以降に書かれている内容である。本訴の争点となる内容を纏めると以下のとおりである。

(1)被告は政治活動を妨害したか

(2)(1)があったとしたら、被告は正当な行為と言えるか

(3)公然と(1)の行為を行うことが名誉棄損と言えるか

(4)(1)の行為は憲法第19条(思想・信条の自由)および憲法第21条(集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由)に反する行為と言えるか

2.被告答弁書の「訴外の事案」について

被告答弁書にて指摘している「原告と鏡野町との間の確執」に関しては全く事件とは関係がない「訴外の事案」である。

よって本訴では被告答弁書(本訴に関わる証拠(乙号証)や証拠説明書は除く)内の訴外案件に対しての認否や反論、言及はしない。

もし被告が「原告と鏡野町との間の確執」について本事件と関係性があると主張するのであれば,被告は民事訴訟法第43条1項に基づいて「鏡野町」の補助参加を裁判所に申し出るべきである。

第二 被告答弁書に対しての原告の主張

以下,被告の答弁書に沿って主張する。

1.第2-1(2)について

被告は津山警察署の設置者である地方公共団体である岡山県であり、本事件が発生した自治体である鏡野町ではない。

2.第2-2(3)について

被告答弁書(同頁14行目)には「西側シャッターが開放」と書かれているが、原告は事件現場から南側シャッターの開放のみを目視で確認しており、その他の場所のシャッターの開閉については不知。

3.第2-2(4)について

被告答弁書によると、午前9時23分頃にかがみのドームの入口付近にパトカーを停車させ(2頁23行目)本件現場に近づいた警察官が「津山警察署かぐらお交番の警察官1名」と書いている。

本来、おそらく地元の鏡野町内の芳野駐在所から警察官が来るのが早いと思うが、わざわざ津山警察署より遠方の「かぐらお交番」の警察官が対応するのは不自然である。

. 第2-2(8)について

警察官が最大6名と主張しているが、なぜ原告は最大7名と主張しているかを述べる。

原告は多数の警察官に囲まれ実際のところは最大で警察官に囲まれた人数が全く把握できる精神状況ではなかった。

【甲4】には6名の男性警察官に囲まれているのは確認できるが,確かに囲まれた際に女性の警察官1名もいたので7名と主張している。写真には後ろ姿ではあるが,映っている。

. 第2-2(9)について

原告が事件現場近辺から離れたのは午前10時2分であり,被告が主張している事件現場から離れたのが午前10時5分頃というのは矛盾がある。

事件現場から離れるまでに拡声機1式を持って近隣の駐車場まで持っていき急いで片付けたとしても10分程度必要であり,どんなに早くとも午前10時より遅くなることはない。

それ以降の文章は不知。

6.第3-1(1)(2)について[3頁26行目より]

被告と通報者についてのやり取りは不知。

仮に通報者が原告の素性を知りつつ意図的に誇張した通報もしくは虚偽の通報を行ったとしても、本事件では通報内容について争っていないのだから、通報者とは全く関係がない。

被告が通報者の通報内容を鵜呑みにし,状況を確認せずに原告に対し過剰な対応(本事件)を起こした被告に全責任がある。

午前9時前(イベント開催前)までは継続的に声を荒げたようなことは言っておらず,イベント主催者(鏡野町)が雇っていた駐車場入り口付近にいた作陽警備保障株式会社(本社:岡山県津山市,当時はどこの警備会社か不明であったが,イベント主催者である鏡野町産業観光課に確認をして判明している)の社員が事件現場に来て「今すぐ(政治活動を)止めろ」と言った際に「文句があるんなら警察を呼べ」(注)一言一句同じかどうかは覚えていないが,そういう意図のことを言ったことは記憶にある)をマイクで言っただけである。

被告答弁書には職員等に向けてと書いているが,主として「今すぐ止めろ」と言った警備員に対して言ったものであり,「職員等に向けて声を荒げて言っている」との通報をしたというので正しいと主張するのであれば,警察を急いで動かすために意図的に誇張した通報を行ったと思われる。

これは「軽犯罪法1条16号の虚偽申告」あるいは意図的に原告を陥れる目的であるならば「刑法第172条の虚偽告訴罪」に該当すると推認され犯罪行為と言える。

 あと,有形力の行使までのやり取りの内容を書くと(録音を取っていないので,「てにをは」まで正しいわけではない)

・イベント会場の入り口付近から警察官が原告よってくる

・原告「おつかれさまです。通報があったんですか?」

・警察官「今すぐ(政治活動(演説)を)やめろ」

・原告「5分で演説を終わらせますので待っていただけますか?」

(一息ついて)

・原告「誰が通報したんだ!」

・警察官に強引に体を捕まえられる(有形力の行使)

→その後,引き続き警察官に囲まれ政治活動を妨害される。

7.第3-1(3)について[4頁20行目より]

位置関係については, 写真を参照し実際に拡声機をつけたスタンドを設置し測定したところ,原告と最も近い警察官の距離は約15cmと推認される。写真を参照した上,被告が配意しているかどうかについては裁判所の判断に任せる。

. 第3-1(4)について[4頁23行目より]

訂正訴状5-2項のとおり。

なお,意図的に刑事二課に現場確認をさせようとしなかったこと。

110番通報をしても刑事二課の刑事じゃなくとも警察官を追加すらしなかったのは明らかに職務怠慢だし、少なくとも津山警察署よりパトカーで緊急で駆け付けたとしても20分以内で来ることができる距離にも関わらず現場への到着が間に合わなかったというのは単なる嘘であると推認する。

第三.違法収集証拠について

乙2号証および乙3号証において証拠能力がないものと主張する。

裁判所においては,乙2号証および乙3号証を却下されたい。

1.乙2号証について

原告はこの写真を撮影しておらず,原告が作成者ではない。正確な撮影日時や撮影者を示すべきである。また,写真は偽造または合成で作られたものであると主張する。

本写真(ポスター内も含む)は異質な文字にところがあり,このように

写真として映らない。

以下,代表的な箇所指摘する。

・ポスターの「ポ」の字に奇妙な明暗がある

・掲示場の「示」の字に奇妙な明暗がある

・注意の欄のところの明暗がまちまち

・他に映っている選挙ポスターとデザインが異なる

・ポスター掲示板と背景の位置が不一致

証拠として【甲13】【甲14】【甲15】を提示する。なお,甲号証では後から偽造されることを防止するために加工したものを提示する(無加工のものは必要であれば法廷にて開示する)。

なお,偽造証拠の使用は,刑法169条(偽証罪)に抵触する可能性がある。

2.乙3号証について

被告は本訴に対して何を立証したいのか不明であるが,証拠として提出するならば,本書き込みが原告のアカウントであり,かつ原告自身が書き込みしたものである証拠を併せて示すべきである。

また,本事件との関係性を示すべきである。

第四.結言

本訴訟の争点は第一-1項のとおりである。被告は争点に沿った主張を行うべきである。

乙2号証はいかにも合成写真みたいなもの,乙3号証にあたっては誰が書いたのか不明である。加えて乙2号証と乙3号証が本訴との関係性が不明である。

しかも,乙2号証にあたっては,鏡野町長選挙期間中に意図的に鏡野町および撮影したもしくは鏡野町選挙管理委員会へ持ち込まない限り出せない証拠であり,被告(岡山県)が提出(作成)した証拠でないと思われる。

以上,

証拠方法

甲第 9号証  津山警察署かぐらお交番の場所を含む全体の地図 [作成者: インターネットサイトMapion]

甲第10号証  原告の当日の動き [作成者: Google社]

甲第11号証  拡声機スタンドの角度から分かる原告と警察官の距離 [作成者: 原告]

甲第12号証  津山警察署と事件現場との位置関係 [作成者: 原告]

甲第13号証  選挙ポスター掲示場の位置 [作成者: (鏡野町内の住民)]

甲第14号証  乙2号証以外の場所の鏡野町長選挙ポスター掲示場の写真 3か所 [作成者: 原告(撮影者)]

甲第15号証  乙2号証と同じ場所の鏡野町長選挙ポスター掲示場の写真  [作成者: 原告(撮影者)]

以上


<被告第一準備書面>

令和8年6月16日

被告訴訟代理人弁護士 青山智紀

被告は、以下のとおり弁論を準備する。

1.

国家賠償法による損害賠償責任が認められるのは、公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合であるが、訴状(最終修正後のもの)請求原因第二記載の5ないし8について、いずれも被告は損害賠償義務を負わない。その理由については、以下に述べるとおりである。

2.請求原因第二記載の5の点について

答弁書記載のとおり(第2、2、(5) 及び第3、1、(1)) 、本件警察官は、「声を荒げている男性がいる。」旨の通報を受けて、かがみのドームに臨場し、現地の警備員の指示によって通報の対象が原告であると理解し、上記通報内容から「けんか口論」の可能性がある(すなわち、これらの点から、原告について警察官職務執行法2条1項にいうところの「周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」にあたる。)と判断し、事実確認のため、警察官職務執行法2条1項に基づき、原告に職務質問を行った。

上記のとおり、本件警察官による、職務質問の要件を満たすとの判断に誤りがあるとは認められないところ、本件警察官は、当該職務質問に際し、「今すぐ(政治活動)を止めろ。」といった命令をすることなく、あくまで任意の質問を行い、原告は拒否することなくこれに応じている(その際の原告の回答が「私の母親は議員に自殺させられた。このことは警察へも相談に行っている。

鏡野町をょゃしようと思づてこうしたことをしている。」といゑ肉容であったことは答弁書記載のとおりであり、乙2号証及び3号証はこのような任意でのやり取りがあったことの信用性を補強するための証拠である。)。

したがって、かかる任意での職務質問について、なんら違法性は認められず、損害賠償義務を負うことはない。

3.請求原因第二記載の6の点について

答弁書記載のとおり(第2、2、(6)及び第3、1、(2)) 、職務質問中に、本件警察官は、原告から通報者は誰かと問われ、「通報者については教えるごとができない。」と伝えたところ、興奮した様子で、かがみのドーム方向に拡声器を通じて「お前らが通報したんじゃろ。都合の悪いことを言われたからじゃろ。」と大声を上げたため、本件警察官はこれをたしなめた。

また、その後、原告は、拡声器を使わずに肉声で大声を張り上げ、かがラのドームに徒歩で向かおうとしたことから、イベント関係者らとの衝突を防止するため、本件警察官は原告の前に立ちはだかり、大声を出さないように警告した。

依然として任意での職務質問が継続していたところ、これらのいずれの行為においても、本件警察官は原告の身体を抑える、強制的に演説を制止させるなどの有形力は行使していないほか、本件警察官が原告の前に立ちはだかったこと.も、あくまで職務質問の継続のために停止させようとしたものにすぎず、いずれも違法性は認められないのであるから、損害賠償義務を負うことはない。

4.請求原因第二記載の7の点について

答弁書記載のとおり(第2、2、(7)) 、本件警察官は、原告に対し「道路使用許可は取っているのか。」、「お前とかいう言葉を使うような演説は政治活動じゃない。」という趣旨のことを述べた。

しかしながら、職務質問の際に道路使用許可の有無を確認することは、特段不合理な質問内容ではない。

また、上記のとおり、原告は拡声器を通じて「お前らが通報したんじゃろ。」などと大声を出し、イベント参加者ら周囲の者に平穏を害する態様の言動を行っていた。

本件警察官は、そのような平穏を害する態様の言葉遣いについて窪めたにすぎないのであって、原告の特定の政治的主張や政治活動の内容を制限しようとしたものではない。

したがって、本件警察官の上記言動について違法性は認められず、損害賠償義務を負うことはない。

5.請求原因第二記載の8の点について

答弁書記載のとおり(第2、2、(8) 及び第3、1、(3)) 、通報に基づき本件現場に臨場した警察官は、本件警察官を含めて最大6名であった。

「声を荒げている男性がいる。」旨の通報であり、状況によっては複数人の当事者がいる「けんか口論」であることも想定されるところ、本件警察以外のパトカー乗務員らにも、現場に向かうよう指令を行ったことから、上記の人数となったものである。

かかる対応について、違法性が認められる点はない。

また、現場での原告への対応についても、本件警察官に限定し、その他の馨察官は原告と距離を保つように配慮して取り囲みといった状況が生じないようにしており、違法性が認められるような対応ではない。

したがって、これらについて損害賠償義務を負うことはない。

6.請求原因第二記載の9の点について

答弁書記載のとおり(第2、2、(9)) 、原告([>1 1 0番通報を受理した津山警察署は、刑事第二課員を含む宿直勤務員を本件現場に向かわせていたものの、原告が立ち去った旨の無線通話を受けたため、警察官らを引き返えさせたものである。

したがって、被告としては、原告の11 0番通報等に適切に対応をしたものであって、なんら違法性が認められるところがなく、損害賠償義務を負うことはない。

以上

証拠方法

乙第1号証  チラシ(令和7年鏡野町産業まつりのもの) [作成者: 鏡野町産業観光課]

乙第2号証  選挙ポスター(令和7年鏡野町長選挙出馬時のもの)を撮影した写真 [作成者: 岡山県津山警察署警察官]

乙第3号証  X(旧:Twitter)投稿画面を印刷した書面 [作成者: 岡山県警察本部警務部警察官]


<判決>

令和8年8月21日判決言渡 同日原本領収裁判所書記官

令和8年(ワ)第12号政治活動の妨害および名誉棄損による慰謝料請求事件

口頭弁論終結日令和8年6月26日

被告

岡山市北区内山下二丁目4番6号

被告 岡山県

同代表者知事 伊原木隆太

同訴訟代理人弁護士 板野次郎

同         池田千明

同         青山智紀

同指定代理人    相原耕一

同         岡田菜摘

同         福田武蔵

同         齋藤義

同         山田啓史

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

被告は、原告に対し、30万円を支払え。

第2 事案の概要等

 本件は、原告が、警察官が原告に対してした職務質問等は、原告の政治活動を妨害し、名誉を毀損する違法なものであると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料30万円の支払を求めた事案である。

2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)

(1)原告は、政治団体「かがやけかがみの」の代表者である。被告は、津山警察署の設置者である地方公共団体である。

(2)原告は、令和7年9月7日(以下、特に断らない限り同日については時刻のみを記載する。)、岡山県苫田郡鏡野町所在の鏡野ドームから南に約10 0メートル離れた歩道上(以下「本件現場」という。)において、午前9時20分頃に津山警察署所属の警察官が本件現場に臨場するまで、拡声器を使用するなどしながら演説を行った。なお、鏡野ドームでは、午前9時から、「2025鏡野町産業まつり」と題するイベントが実施されていた。

(3)原告は、当該警察官から職務質問を受け(以下「本件職務質問」遅くとも午前10時2分頃には、本件現場から離れた。

3 争点及びこれに対する当事者の主張

本件の争点は、国家賠償法1条1項の違法な行為の存否である。

(1)原告の主張

被告は、下記のとおり、本件職務質問の際に意図的に原告の権利を侵害した上に名誉毀損も行った。

原告は、被告の当該公権力の行使によって違法に損害を受けたものであり、これらによる精神的苦痛や名誉回復の損害を金銭として算出すると、30万円を下らない。

 警察官は、午前9時15分頃、鏡野ドームの入口付近にパトカーを停車させて原告に近寄り、午前9時20分頃、原告に対し、「今すぐ(政治活動を)止めろ。」と命令した(以下「本件行為1」という。)。

  その後、原告は、「誰が通報したんだ!」と拡声器で叫び、手を上で振ると警察官は、強引に原告の体を押さえ、強制的に演説を制止させた(以下「本件行為2」という。)。

  これらは、原告の政治活動を演説妨害という手段で妨げるもので、憲法19条及び21条を無視して原告の権利を侵害するものである。

  また、「犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」がないにも関わらず、政治活動を制止させ職務質問を強要した点で、警察官職務執行法2条1項違反にも当たる。

 原告は、警察官に対し、津山警察署の刑事第二課の人(以下「刑事第二課員」という。)を呼んでくれと再三再四頼んだが、当該警察官は何ら対応しなかったため、原告は、午前9時28分に11 0番通報を行い、刑事第二課員を本件現場に来させるよう依頼を行った。

  しかし、午前9時50分頃に原告がその場から離れるまで、刑事第二課員がやってくる様子はなく、被告は原告の11 0番通報に一切対応しなかった(以下「本件行為3」という。)。

  原告は、110番通報しても一切対応されなかったことに対する精神的苦痛を味わった。

 原告は、前記イのやり取りの間、最大で7人くらいの警察官に取り囲まれた(以下「本件行為4」という。)。

  これにより、原告は精神的苦痛を味わった。また、原告が警察官に囲まれた状況を近隣のイベントに参加していた大勢の人に見られており、被告は、原告の名誉を毀損した。

(2) 被告の主張

本件行為1ないし本件行為3は否認する。

本件行為4は最大6名の警察官が臨場し、甲第4号証の位置関係になったことがあることは認める。

本件現場における警察官の一連の対応は、原告の特定の政治的主張や政治活動の内容を制限する意図で行われたものではなく、公共の安全と秩序を維持するためにされたものであり、手段も社会通念上相当な合理的なものであって、適法である。

また、原告の110番通報に係る要請に関しては、刑事第二課員を臨場させる義務はない上、本件現場に向かっていた同課員らが到着する前に原告が本件現場を離れてその要請を放棄したものであるから、いかなる意味でも違法ではない。

第3 当裁判所の判断

1 本件行為1について

原告は、午前9時20分頃、警察官から「今すぐ(政治活動を)止めろ。」と命令されたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

したがって、本件行為1が国家賠償法1条1項の違法な行為であるとする原告の主張は採用できない。

2 本件行為2について

(1) 原告は、警察官が、強引に原告の体を押さえ、強制的に演説を制止させたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

 したがって、本件行為2が国家賠償法1条1項の違法な行為であるとする原告の主張は採用できない。

(2)なお、被告は、有形力の行使について、原告が大声を張り上げながら鏡野ドームに徒歩で向かおうとした際に、警察官が、イベント関係者との衝突を防止するため、原告の前に立ちはだかり、大声を出さないように警告したことはあ
った旨を主張し、これに対し、原告は、本件行為4と同様の理由で当該有形カの行使は違法であると主張する。

 この点につき、津山警察署が、午前9時頃、「職員等に向けて声を荒げている男性がいる」旨の通報を受理したこと、警察官の臨場後、原告が、「誰が通報したんだ!」と拡声器で叫んだことは争いがない。

 警察官は、職務質問に付随して、強制に至らない限り、必要性や緊急性等を考慮し、社会通念上相当と認められる範囲で有形力を行使することができるものと解されるところ、これらの事実関係からすれば、鏡野ドームヘ向かう原告の前に立ちはだかり、大声を出さないように警告したことは、原告とイベント関係者とのトラブルを防止するための必要性及び緊急性が認められる。

 警察官の行為態様も、前記必要性及び緊急性を踏まえ、鏡野ドームに向かおうとする原告の前に立ちはだかったにとどまることからすれば、社会通念上相当と認められる。

 したがって、当該有形力の行使についても、国家賠償法1条1項上違法であるとは認められない。

3 本件行為3について

 原告が、本件現場に臨場した警察官に対し、津山警察署の刑事第二課員の臨場を要請したこと、原告が110番通報をし、刑事第二課員の臨場を要請したこと及び刑事第二課員が本件現場に臨場しなかったことは争いがない。

 被告は、原告が刑事第二課員を含む警察官が到着する前に本件現場を離れたのであり、被告は、原告の110番通報に対し、刑事第二課員を含む警察官を本件現場に向かわぜたと主張する。

 他方で、原告は、津山警察署から本件現場まで20分以内で到着することができ、被告の主張は虚偽であると主張する。

 しかし、津山警察署から本件現場までは約10キロメートル、所要時間は約22分間であると認められる。

 他方で、原告は、午前9時28分に110番通報をし、午前9時50分から午前10時2分頃までの間に本件現場を離れたと主張する。

 そうすると、原告の主張を前提としても、原告が通報してがら本件現場を離れるまでの時間は22分間から34分間程度であり、上記の所要時間には通報を受けてから津山警察署を出発するまでの時間は考慮されていないこと等を踏まえれば、刑事第二課員を含む警察官が本件現場に臨場する前に原告が本件現場を離れた旨の被告の主張は不自然とはいえない。

 そして、他に本件行為3を認めるに足りる証拠はない。

 したがって、本件行為3が国家賠償法1条1項の違法な行為であるとする原告の主張は採用できない。

4 本件行為4について

 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件職務質問の際、少なくとも6名の警察官が原告の周囲に立っていたこと、原告と原告に最も近い警察官との距離は少なくとも15センチメートル以上空いており、その他の警察官は当該警察官を挟んで原告と反対側に立ち、原告の周囲を取りむ状況とはなっていなかったことが認められる。

 上記の位置関係に加え、当事者が複数人であることを想定して、複数人の警察官に対して臨場するよう指令を行った旨の被告の主張に不自然な点はないことからすれば、警察官らの行為に違法性は認められない。

 また、原告の周囲に複数の警察官が立っていたとしても、そのことが直ちに原告の社会的評価を低下させる表現に当たるとはいえず、原告の名誉を毀損するものとはいえない。

 したがって、本件行為4が国家賠償法1条1項の違法な行為であるとする原告の主張は採用できない。

5 小括

以上のとおり、本件行為1ないし本件行為3は、原告の主張する事実が認められず、本件行為4は国家賠償法1条1項上違法な行為であるとはいえないから、本件職務質問に際し同項の違法な行為があった旨の原告の主張はいずれも採用できない。

第4 結論

よって、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

岡山地方裁判所津山支部 裁判官 袋井泰輔


<控訴理由書>

続く