(令和8年3月26日送付)

【趣旨】   

下記、住民監査請求書を参照

【経過】   

令和7年 3月30日 鏡野町長選挙、鏡野町議会議員選挙執行

令和7年 6月17日 収支報告書を入手

令和7年 7月28日 公費負担に関する文書(鏡野町長選挙)を入手

令和8年 1月22日 公費負担に関する文書(鏡野町議会議員選挙)を入手

令和8年 3月26日 特定の候補者の選挙ポスター代が意図的に公費上限額を請求している行為が、住民に損害を及ぼしていると考えられるため、監査および必要な措置を求めるために住民監査請求を行った。

令和8年 4月23日 請求の趣旨および理由に関する意見陳述

令和8年 5月22日 請求棄却

→提訴 (令和8年6月15日)

監査請求および監査結果の資料

一部、分かりやすいように文言を修正、省略しています。


<住民監査請求書>

令和8年  3月  26日

鏡野町監査委員 御中

以下のとおり、地方自治法第242条第1項に基づき、住民監査請求を行います。

1.請求の趣旨

 鏡野町における下記の行為が、住民に損害を及ぼしていると考えられるため、監査および必要な措置を求めます。

【対象となる行為】

 令和7年3月30日執行の鏡野町長選挙、および同日に執行の鏡野町議会議員選挙における選挙運動用ポスター作成に係る公費支出の額が不適切(過大な契約金額)であること。

2.当該行為に関する事実経過

 以下、事実関係を時系列(鏡野町情報公開条例第11条第2項の規定により請求時以降のみ)を示す。

(1)令和7年3月30日執行の各選挙に関して

 請求者は令和7年6月9日付けで鏡野町に対し収支報告書に関して開示請求を行い、同年6月17日に開示を受けた。

【別紙1】

(2)鏡野町長選挙に関して

 請求者は令和7年7月14日付けで鏡野町に対し「選挙運動の公費負担に関する文書」に開示請求を行い、同年7月28日に開示を受けた。

【別紙2】

(3)鏡野町議会議員選挙に関して

 請求者は令和8年1月22日付けで鏡野町に対し「選挙運動の公費負担に関する文書」に開示請求を行い、同年1月29日に開示を受けた。

【別紙3】

3.行為または不作為の違法性

 当該行為は以下の点で法律に違反している疑いがあります。

(1) 地方自治法(第2条14項)

 地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

(2)刑法(第246条 詐欺罪)

 請求業者は、公費負担の上限額になるよう、意図的に選挙ポスター代を水増し請求したとしか考えられず、刑法の詐欺罪に抵触する可能性がある。

 ※その他、根拠法令および条例名に該当する場合は,監査で確認願います。

4.損害または不利益

 鏡野町は市場価格にそぐわない過剰な出費を行っており,住民に不利益が生じています。

A. 公費負担の概要

 選挙の各候補者の選挙運動用ポスターの費用および公費負担の額は別紙のとおりである。【別紙4】【別紙5】【別紙6】

B. A項の説明

 公費負担の上限額は、おそらく公職選挙法第143条の逐条解説(当時の衆議院小選挙区選出議員又は参議院選挙区議員の選挙の場合)の式に則って算出し、令和2年12月28日制定の条例第31号(鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例)を基に決定したものであると思われるが、明らかに実勢価格と比べあまりにも高価であると考える【別紙7】

 本町のように規模の小さい町ほど、ポスター掲示場の数が少ないため、計算上ポスター単価が高くなり、より実勢価格と乖離する傾向がある。

 一覧表【別紙4】によると、公費請求がある候補者で比較すると最低金額(¥93,896)と最高金額(¥375,870)の間で約4倍の差があり、公費負担なしの最低金額(¥39,499)も含めて比較すると、約9.5倍の差がある。

 加えて、一部業者は公費上限ギリギリの請求しており、明らかに意図的に金額を釣り上げているとしか考えられない(20名中10名)。

 当方で調べたところによると、本町と同じ計算方法(公職選挙法第143条の逐条解説に準拠した式)で算出している自治体がある一方で、独自の式にて算出している自治体や,あらかじめポスター単価の上限額を決めている自治体がある【別紙8】

 また、地方議会の中にも,選挙ポスターの金額について疑問を呈している議員もいる【別紙9】

 よって、地方自治法(第2条14項)に書かれている条文の観点から、現状の公費負担額は不適当であると考える。

5. 求める措置(請求事項)

 地方自治法第242条第1項に基づき、以下を求めます。

 ・過払い金の町への返還

 ・事実関係および法的根拠の調査・確認

 ・責任の所在および再発防止策の明確化

 ・必要な是正措置および適正な対応

 以上、監査および必要な措置を求めます。

添付書類

別紙1 一部開示決定通知書(R7.6.13)

別紙2 一部開示決定通知書(R7.7.25)

別紙3 一部開示決定通知書(R8.1.27)

別紙4 各候補者が選挙ポスターに費やした費用(R8.3.24)

 ・ 別紙5,別紙6を参照に作成

 ・ 公人(町長、議員)以外の候補者の名前は隠しています

 ・ 詳細な説明は、以下にある陳述用書類に纏めています。

別紙5 別紙1~3で請求した資料を候補者ごとに纏めた資料

   (証拠として,請求者が撮影した選挙ポスターの写真も添付)

    〇内の数字は,別紙4の連番と同じ

    注)情報が莫大のため、別紙4としてまとめた

別紙6 別紙5で特定できなかった候補者(同一のポスター会社)の資料

    (証拠として,請求者が撮影した選挙ポスターの写真も添付)

    注)情報が莫大のため、別紙4としてまとめた。

別紙7 令和7年3月30日執行 鏡野町長選挙鏡野町議会議員選挙候補者のしおり P43

 鏡野町の公費限度額の記載部分を抜粋

別紙8 各市町村の選挙ポスターの公費負担

 ・該当部分を抜粋

 ① 茨城県北相馬郡利根町 (上限額を固定+枚数を掲示場数の倍数でかける)

  ポスター単価上限を1,500円とし、作成枚数をポスター掲示場数の1.1倍として算出

 ② 宮城県伊具郡丸森町 (計算式内の固定部分を減額している)

  別紙7との比較

  (固定部分)316,250円 → 158,125円

  (変動部分)541.35円(同じ)

 ③ 北海道増毛郡増毛町 (上限額を固定+枚数を掲示場数の倍数でかける)

  ポスター単価上限を2,016円とし、作成枚数をポスター掲示場数の1.2倍として算出

 ④ 福島県耶麻郡西会津町 (計算式内の固定部分を減額している)

  別紙7との比較

  (固定部分)316,250円 → 237,188円

  (変動部分)541.35円 → 405.98円

 ⑤ 鹿児島県南九州市 (上限額(単価)を固定)

  単価 1,027円 

 ⑥北海道厚岸郡厚岸町

 ※参考 文書には載せていないが、たまたま見つけたもの

  高知県香美市 (https://www.city.kami.lg.jp/soshiki/44/senkyokouei.html) (計算式内の固定部分を大幅減額し、変動部分の額を上げている)

  別紙7との比較

  (固定部分)316,250円 → 50,000円  極端に下げている

  (変動部分)541.35円 → 586.88円  変動部分の額を上げている

別紙9 新宿区議会議員 渡辺やすしのHPより抜粋した資料


<陳述用文書>

(補足資料)公費負担額が実勢価格と乖離している点について

1.はじめに

 「平等主義」は選挙制度の基本原則の1つであり、日本国憲法第14条および第44条に基づくものである【別紙1】

 平たく言うと、選挙人および被選挙人は差別されないものである。

 請求人が行った住民監査請求は、令和7年3月30日に執行した鏡野町長選挙および鏡野町議会議員選挙において鏡野町と業者間で契約した「選挙ポスター」に関する金額が、あまりにも過大ではないか、公営費として認められていない費用に流用したと疑わざるをえない内容であったため、調査、公営費の返還および是正を求めるために行ったものである。もし公営費を別用途に流用されていたとすれば、前段に記載した選挙制度の基本原則である「平等主義」に反するものと考える。

2.選挙ポスターの公営費について

 選挙ポスターの公費負担の額が実勢価格より高く設定されていると考えるにあたって、正当な理由で実勢価格と乖離しているならば以下の理由が考えられる。

①地域間格差

 公費負担額は全国的な基準や過去の事例を参考にして定められるため(公職選挙法施行令(昭和25年政令第88号) 第百十条の二の2項,衆議院小選挙区選出議員又は参議院議員の選挙における公職の候補者についての規定),地域ごとの実勢価格と乖離している。

②業者間格差

 印刷業者の見積もりや仕様書に基づいて算出されることが多く、実際の発注数や品質の違い、業者間の競争状況などによって価格に幅が生じている。

③意図的に余裕を持たせている

 公費負担には選挙活動の公平性を保つ目的や、予期しないコスト増への対応も含まれているため、余裕を持った額が設定されている。

 今回の住民監査請求(以下「本請求」と書く)においては,以上の①~③の原因とは考えられない程度の価格差があり,意図的に上限価格で請求したとしか考えられない状況である。

3.ポスター作成の契約内容について

 各候補者が選挙ポスターに費やした費用を示す【別紙2】(本請求に掲載しているので省略)。

 実勢価格を検討するうえで、説明するための資料として【別紙3】を示す。

 

以下の5種類に分類できる。

 A. 自作+α

 B. ネット印刷業者

 C. 街中の印刷業者(低価格グループ)

 D. 企画会社

 E. 街中の印刷業者(高価格グループ)

4.3項の考察

(1)A項について

 →公営費の議論とは無関係

 ⑳さんはポスター作成目的で消耗品(紙・インクなど)を購入する金額を計上しており、実勢価格云々の議論をするのに不要のため、【別紙3】には記載していない。

 加えて言うならば、消耗品類は大量に残っているものもあり、1枚当たりのコストを計算することは極めて困難である。もちろん公営費扱いにしていない。

 金額としては、B項とC項の間あたりと推認される。

(2)B項について

 →問題なし、公営費として請求しなかったことを褒めるべき

 ⑱さんはネット業者で印刷を依頼している。

 【別紙3】に他社の金額との比較表を載せている(110枚に近い100枚換算で計算したもの)。

 ネット業者の印刷価格と見積もり額との間の金額であり、妥当な金額と思われる。

 本資料の参考価格には載せていないが、公営費として対応をする場合は文書作成料が2~3万円程度加算されるため、この金額より割高になる。

 公営費として考えた場合は、妥当な相場として@600と考えた方がいいと思われる。

(3)C項について

 →致し方のないレベル

 【別紙3】には前回の選挙ポスターと比較できるよう、今回のポスターと並べて表に示した。

 人の手が加えられるため、省人化しているネット業者に比べ割高であるのは致し方がない。あと、業者と直接的にやり取りし微調整ということができるという点を考慮しても、この金額は「致し方のないレベル」と考える。

 公営費として、@1,200くらいが妥当といえる(計132,000円)。

(4)D項について

 →公費が別用途に流用されていると言わざるをえない

 以下で述べる(5)項と公費の流用されやすい構造である。

 選挙ポスターの公費負担を高めに請求して、他の用途(ビラや選挙ハガキのデザイン代、選挙カー看板代とか)に補填されている(安くしている)と疑われるのは当然である。

 ②の方の場合、大した変化もしていないにも関わらず、110枚で約30万円とはありえない話である。

 それは(3)項の金額と比較して倍以上も異なるからである。以降も書くが、まだ意図的に上限金額ギリギリを請求している業者に比べたらまだ「マシな方」である。

 他の用途に補填されていると疑われる主張を補強するための資料として【別紙4】を示す。

 この資料は、ポスターデザインの相場を示すため、外部委託金額の一覧を上位金額より示したものである。

 状況によって違うが、一覧を見る限り10万円は明らかに相場として明らかに高額であることが分かると考えるのが当然だと思う(自分としては1から作ったとしても高くて3万円くらいが妥当と考えている)。

 100歩譲って10万円かかると仮定したとして、(3)項で示した妥当な金額(132,000円)に10万円と足すと

 132,000 + 100,000 = 232,000 [円](@2,109)

 となる(以下、「試算額」と書く)。

 ②の方の金額が302,500円であることから、上記の計算に比べ明らかに高いと考えるのが当然である(ありえない話である)。

 同様に③④⑦⑪⑯さんも「試算額」より高い。

 よって「公費が別用途に流用されていると言わざるをえない」と判断させて貰うに至った。

(5)E項について

 →(4)項と同じ。特にS社は酷い(7名全て公費上限額)。

 (4)項に書いたことと同じ部分は省略する。

 【別紙3】に書いたように、9名全員「試算額」より高額である。この項で特に述べたいのはS社である。

 S社に依頼している7名全てが公費上限額を請求している。特に悪質と思われるのは(敢えてどの候補者(公人)のことかは言わないが)、前回の町議選の掲示責任者だけを変えて他はそのままのデザイン、ただ配置を変え文言を変えたただけのものもあった。

5.その他

 住民監査請求を行うにあたり情報公開請求を行ったが、どれがどの候補者のものか分からないようにするために公人でありながら名前の部分を黒塗りし数字で隠すという隠蔽行為を行っている。

 しかし、当方で所有している情報からこの監査請求に行うにあたりほぼ候補者が特定できた【別紙2】ので、本請求に至ったわけである。

6.結論

 以上より、地方自治法第242条第1項に基づき、以下を求めます。

・過払い金の町への返還

・事実関係および法的根拠の調査・確認

・責任の所在および再発防止策の明確化

・必要な是正措置および適正な対応

以上、

【添付資料】

別紙1

 逐条解説 公職選挙法 改訂版(上) P7~P8

別紙2

 各候補が選挙ポスターに費やした費用

 (住民監査請求書の別紙4と同じ)

別紙3

 各候補者の選挙ポスター代の検証

別紙4

 ポスターのデザインを外部委託した場合の金額一覧

 (クラウドワークスで「ポスター作成」と検索した際にヒットした仕事内容の一覧、金額が高い順50件)

別紙5~7

 選挙ポスター印刷をインターネットで依頼した際の金額の論拠資料

 (別紙3の数値根拠となる元資料)

 ・株式会社プリントパック(別紙5)

 ・グラフィック(別紙6)  

 ・プリントネット(別紙7)


<鏡野町職員措置請求に係る監査結果(選挙運動用ポスターの作成の公費負担)>

令和8年5月22日

鏡野町監査委員

【目次】

第1 監査の請求

 1 請求人

 2 監査請求書の提出

 3 監査請求書の記載内容

第2 要件審査及び請求の受理

第3 長及び鏃会への通知

第4 事実の証明

第5 監査委員の除斥

第6 監査の実施

 1 監査の期間

 2 監査対象部局

 3 請求人の陳述及び証拠の提出

  (1)  陳述の内容

  (2) 証拠の提出

 4 監査対象部局の監査

  (1) 事情を聴取した者

  (2) 聴取した事実及び意見等

 5 関係人調査

  (1) 文書による質問及び回答について

第7 監査の結果

 1 主文

 2 理由

  (1) 本件の監査対象事項

  (2) 関係法令

  (3) 認定事実

  (4) 監査委員の判断

  (5) 結論

意見

【決定書】

第1 監査の請求

 1 請求人

 (個人情報のため省略)

 2 監査請求書の提出

 令和8年3月26日

 3 監査請求書の記載内容

 (住民監査請求書を示しているため省略)

第2 要件審査及び請求の受理

 本件請求は令和8年3月26日に提起され、債権管理の権限を有する町長に、令和7年3月30日執行の鏡野町長選挙及び同日に執行の鏡野町議会議員選挙における選挙運動用ポスターの作成に係る公費支出が実勢価格と比較して著しく高額であり、過払い金の町への返還及び必要な是正措置等を求めるものであると解し、地方自治法第242条第1項に定める要件を満たしていると認め、令和8年3月26日にこれを受理した。

第3 長及び議会への通知

 地方自治法第242条第3項の規定に基づき、住民監査請求の要旨について令和8年3月26日付けで通知を行った。

第4 事実の証明

 請求人から事実の証明として監査請求に添えて添付書類(事実証明書類)の提出があったので、第1号証から第9号証までとする。

第5 監査委員の除斥

 監査委員 長石幸男は、地方自治法第19 9条の2 (監査委員の除斥)に該当すると判断したため、本件請求にかかる監査の執行については除斥とした。

第6 監査の実施

 1 監査の期間

  令和8年3月26日から令和8年5月22日まで

 2 監査対象部局

  鏡野町選挙管理委員会事務局(以下「選管事務局」という。)

  出納室

 3 請求人の陳述及び証拠の提出

 令和8年4月23日に、請求人に対し地方自治法第242条第7項の規定による証拠の提出及び陳述の機会を設けた。請求人の陳述は以下のとおりである。

 なお、陳述は令和8年4月22日に提出された補足資料に基づき行われ、その記載内容は以下のとおりである。

  (1)  陳述の内容

   (<陳述用文章>の記載と同じのため、省略)

  (2) 証拠の提出

   請求人の意見陳述の際に補足資料に添えて添付書類(事実証明書類)の提出があったので、追第1号証から追第7号証とする。

 4 監査対象部局の監査

  本件について、令和8年4月23日付けで住民監査請求に係る選管事務局及び出納室の監査の実施と監査資料の提出についての通知を行い、関係書類の提出を求め、同年4月30日に選管事務局の職員等から、本件請求に関する事実及び意見などについて事情を聴取した。

  (1) 事情を聴取した者

   選管事務局長、書記及び会計管理者

  (2)聴取した事実及び意見等

   ア 選挙の公営制度について

    選挙の公営制度とは、公明正大でお金のかからない選挙を実現するとともに、候補者間の選挙運動の機会均等を図ることを目的に設けられているもので、

    令和2年公職選挙法の改正により、都道府県又は市に認められていた議会の議員及び長の選挙における選挙運動用自動車の使用及び選挙運動用ポスターの作成等について、町村にも公営が認められることとなり、

    各自治体ともに条例を定めることによって、公営制度を導入できることとなり、本町においても、令和2年12月に条例を公布、施行している。

    選挙運動用ポスターの作成については、鏡野町議会諧員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例及び同規程に基づき事務執行している。

   イ 制度の周知について

    町選挙(町長選挙・町議会議員選挙)における制度の運用について、立候補予定者説明会において、制度及ひ~請求方法等についての冊子(候補者のしおり)を用いて説明している。

   ウ 監査請求の対象となった支出について

    今般、監査請求されている令和7年3月30日執行の鏡野町長選挙及び同日に執行の鏡野町議会議員選挙においては、町長選挙において、候補者1名の選挙運動用ポスター代金として1業者に375, 870円を支出している。

    また、鏡野町議会議員選挙においては、候補者17名の選挙運動用ポスター代金として10業者に5, 099,456円を支出している。

    合わせて、住民監査請求にある5,475, 326円の支出が行われている。

   工 選挙運動用ポスターの作成の公費負担の手続等について

    まず、候補者は、ポスター作成業者とポスターの作成に関し有償契約を締結し、選挙管理委員会(以下「委員会」という。)へ選挙運動用ポスター作成契約書(写)を添付して、ポスター作成契約届を提出する。

    次に、候補者から委員会ヘポスター作成枚数確認申請書を提出し、条例に定める枚数の範囲内である確認を受ける。

    委員会では、提出されたポスター作成枚数確認申請書で作成枚数を確認し、ポスター作成枚数確認書を候補者に交付する。

    候補者は、委員会から交付されたポスター作成枚数確認書及び候補者が作成したポスター作成証明書をポスター作成業者へ渡す。

    選挙が終わり、公営が受けられるとなった時点で、ポスター作成業者から町へ公費負担の対象となる代金を請求することとなる。

    町へは、請求書と、請求内訳書、候補者から出ているポスター作成証明書、委員会が交付したポスター作成枚数確認書を添付して請求する。

    その後、選管事務局は、提出された請求の審査を行い、費用の支払となる。

    今回、選挙運動用ポスターの作成の公費負担の件では、18名の候補者からそれぞれ手続がなされており、条例及び規程に基づく審査等を適正かつ確実に実施して、町から公費を支出している。

    当時の鏡野町鏃会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例第11条に定める公費の支払額は、ポスター1枚当たりの作成単価541円31銭にポスター掲示場の数(現在110箇所)を乗じて得た金額に

    316,250円を加えた金額をポスター掲示場の数で除して得た金額を単価の限度額( 3, 4 1 7円)とする。

    またその額にポスター作成上限枚数110枚(掲示場の数)を乗じた額で最高限度額が375,870円となる。

   オ 会計管理者の支払について

    支出命令者より支出負担行為兼支出命令書の送付を受け、予算の目的、金額の算定等を審査し、請求書等、鏡野町財務規則第67条第1項中別表第2に規定する支出負担行為に必要な書類を確認し、請求者に支払をしている。

   力 契約届出による選挙運動用ポスターの作成についての説明と意見

   (ア)選管事務局等からの説明と監査請求に対する意見

    ポスター作成契約届出による作成契約枚数等については、各候補者による民事契約のため契約内容には差異があり、公費負担額がポスター掲示場の数に相当する数の範囲内の枚数に限られており、

    作成枚数をポスター作成枚数確認書で候補者と作成業者に確認させる。

    また、鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例第11条により、選挙運動用ポスターの作成の公費負担の限度額及び1枚当たりの作成単価を定めている。

    ポスター作成業者の選定は候補者に委ねており、本町が指定するものではないと考える。

    双方で作成の契約を締結しており、請求者が主張している公費負担支出額が過大だとする主張は、契約、商取引、経済活動の実態に照らし、理由があるとは認められない。

  (イ)監査委員による確認事項

   ポスター作成について、公費負担の対象となるのは、実際に作成したポスターのうち、ポスター掲示場相当数の11 0枚が限度で、公費の対象外のポスター代金は候補者の自費となる。

   ポスターの作成種類数について制限はないが、公費負担の対象となるのは作成したポスターのうち11 0枚のみである。

   公費の支出手続について、110枚を超えて作成した場合の公費負担分の算定方法は、作成に要した総額を作成枚数で除して得た単価に、110枚を乗じた金額となる。

   ただし、単価の上限、総額の上限は条例の定めのとおりである。

   契約書等の関係書類の審査方法については、書面による審査である。

   選管事務局等は、公費支出の事務手続等について適正な執行であったと考えている。

   公費負担についても、公職選挙法に基づき、条例及び規程による関係書類を提出させ、適正に予算執行しているものであり、何ら瑕疵があるものではない。

5 関係人調査

 (1) 文書による質問及び回答について

  地方自治法第199条第8項の規定に基づき、令和8年4月8日付けで監査のための調査として公費請求のあった選挙運動用ポスター作成業者に対し、選挙運動用ポスター作成契約に係る契約金額の内訳などについて、文書で回答を求めたところ、

  当職が再度要請を含め回答期限とした令和8年5月11日までに文書回答があり、その概要は次のとおりである。

  各業者名及び費用内訳の金額については、各業者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、記載していない。

   公費の請求のあったポスター印刷業者10業者、対象候補者18名に対し、7業者、15名分の候補者の回答があった。内訳については、デザイン費、版下・製版費、印刷費、用紙代、裁断・仕上げ費、諸経費等がそれぞれ明記されており、

    その合計金額は契約書及び請求内訳書に記載されている金額と一致していた。

   本調査には強制力がないため、未提出の3業者、3名分の候補者については再三の要請はしていない。

    しかしながら、これら未回答業者分についても、選管事務局が保管するポスター作成契約届出書や作成枚数確認申請書等の公的証拠書類に基づき、条例に定める公費負担上限以内であること、及び支出事務手続に瑕疵がないことを改めて確認した。

    調査への回答が得られなかったことのみをもって、直ちに支出が違法又は不当であると断定する根拠は見当たらない。

第7 監査の結果

本件請求に関しては、以下のとおり決定した。

1 主文

 本件請求は、これを棄却する。

2 理由

 (1) 本件の監査対象事項

  住民監査請求書の記載から、請求人は令和7年3月30日執行の鏡野町長選挙及び同日に執行の鏡野町議会議員選挙における選挙運動用ポスターの作成に係る公費支出が実勢価格と比較して著しく高額であるとし、

  過払い金の町への返還及び必要な是正措置等を求めている。

  以上のことから、次のことを対象として監査を行った。

  ア 本件公費負担金の支出が違法又は不当になされたものかどうか

  イ 本件公費負担金の支出に伴う町長の不当利得返還請求権発生の有無について

 (2) 関係法令

 本件請求の関係法令は、次のとおりである。

  ア 地方自治法(昭和22年4月17日法律第67号)

  (地方公共団体の法人格及び事務)

   第2条 略

   2~1 3 略

   1 4 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

  イ 地方財政法(昭和23年7月7日号外法律第109号)

  (予算の執行等)

   第4条 地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。

  ウ 公職選挙法(昭和25年4月15日号外法律第100号)

  (文書図画の掲示)

   第143条 略

   2~14 略

   1 5 地方公共団体の議会の識員又は長の選挙については、地方公共団体は、前項の規定(参議院比例代表選出議員の選挙に係る部分を除く。)に準じて、条例で定めるところにより、公職の候補者の第一項第五号のポスターの作成について、

    無料とすることができる。

  (選挙運動に関する収入及び支出の報告書の提出)

   第189条 出納責任者は、公職の候補者の選挙運動に関しなされた寄附及びその他の収入並びに支出について、第18 5条第一項各号に掲げる事項を記載した報告書を、前条第一項の領収書その他の支出を証すべき書面の写し

    (同項の領収書その他の支出を証すべき書面を徴し難い事情があったときは、その旨並びに当該支出の金額、年月日及び目的を記載した書面又は当該支出の目的を記載した書面並びに金融機関が作成した振込みの明細書であって当該支出の金額及び年月日を記載したものの写し)

    を添付して、次の各号の定めるところにより、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)

    に提出しなければならない。

  工 鏡野町議会鏃員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例(令和2年12月28日条例第31号)

  (選挙運動用ポスターの作成の公費負担)

   第9条 候補者は、第11条に定める額の範囲内で、選挙運動用ポスターを無料で作成することができる。この場合においては、第2条ただし書の規定を準用する。

  (選挙運動用ポスターの作成の契約締結の届出)

   第10条 前条の規定の適用を受けようとする者は、ポスターの作成を業とする者との間において選挙運動用ポスターの作成に関し有償契約を締結し、委員会が定めるところにより、その旨を委員会に届け出なければならない。

  (選挙運動用ポスターの作成の公費負担額及び支払手続)

   第11条 鏡野町は、候補者(前条の規定による届出をした者に限る。)が同条の契約に基づき当該契約の相手方であるポスターの作成を業とする者に支払うべき金額のうち、当該契約に基づき作成された選挙運動用ポスターの1枚当たりの作成単価

    (当該作成単価が、586円88銭にポスター掲示場の数を乗じて得た金額に316,250円を加えた金額をポスター掲示場の数で除して得た金額(1円末満の端数がある場合には、その端数は1円とする。)を超える場合には、当該除して得た金額)

    に当該選挙運動用ポスターの作成枚数(当該候補者を通じてポスター掲示場の数の範囲内のものであることにつき、委員会が定めるところにより、当該候補者からの申請に基づき、委員会が確認したものに限る。)を乗じて得た金額を、

    第9条後段において準用する第2条ただし書に規定する要件に該当する場合に限り、当該ポスターの作成を業とする者からの請求に基づき、当該ポスターの作成を業とする者に対し支払う。

  オ 鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する規程(令和3年1月8日選挙管理委員会告示第1号)

  (選挙運動用自動車の使用等の契約締結の届出)

   第2条 条例第2条、条例第6条又は条例第9条の規定の適用を受けようとする者は、条例第3条、条例第7条又は条例第10条に規定する有償契約を締結した場合には、直ちに(立候補の届出前に当該契約を締結した場合には、立候補の届出後直ちに)、

   当該契約に関する書面の写しを添えて、選挙運動用自動車の使用の契約届(様式第1号)、選挙運動用ビラ作成契約届(様式第1号の2)又は選挙運動用ポスター作成契約届(様式第2号)により届出をしなければならない。

  (選挙運動用自動車の使用等の公費負担の確認申請等)

   第3条 候補者(前条の届出をした者に限る。以下同じ。)は、条例第4条第2号イ、条例第8条又は第11条の規定による確認を受けようとする場合には、鏡野町選挙管理委員会に対し、

    自動車燃料代確認申請書(様式第3号)、ビラ作成枚数確認申請書(様式第3号の2)又はポスター作成枚数確認申請書(様式第4号)により申請しなければならない。

    2 前項の確認をした場合は、自動車燃料代確認書(様式第5号)、ビラ作成枚数確認書(様式第5号の2)又はポスター作成枚数確認書(様式第6号)を候補者に交付するものとする。

  (燃料供給業者等への確認書の提出)

   第4条 候補者は、前条第1項の確認を受けた場合には、直ちに、同条第2項の確認書を、条例第3条に規定する有償契約を締結した選挙運動用自動車の燃料を供給する者(以下「燃料供給業者」という。)、

    条例第7条に規定する有償契約を締結したビラの作成を業とする者(以下「ビラ作成業者」という。)又は条例第10条に規定する有償契約を締結したポスターの作成を業とする者(以下「ポスター作成業者」という。)に提出しなければならない。

  (契約業者等への選挙運動用自動車の使用等の証明書の提出)

   第5条 候補者は、選挙運動用自動車使用証明書(様式第7号)、ビラ作成証明書(様式第7号の2)又はポスター作成証明書(様式第8号)を、条例第3条、第7条又は第10条に規定する有償契約を締結した一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者その他の
者、

    ビラ作成業者又はポスター作成業者(以下「契約業者等」という。)に提出しなければならない。

    2 略

  (請求書の提出)

   第6条 契約業者等は、条例第4条、条例第8条又は条例第11条の規定による請求をしようとする場合には、請求書(様式第9号、様式第9号の2 様式第10号)に前条第1項の選挙運動用自動車使用証明書、

    ビラ作成証明書又はポスター作成証明書(当該証明書のほかに、燃料供給業者にあっては第3条第2項の確認書及び前条第2項に規定する書面の写し、ビラ作成業者又はポスター作成業者にあっては第3条第2項の確認書)を添えて、鏡野町長に提出しなければならない。

  力 鏡野町財務規則(令和3年4月1日規則第15号)

   第3節 支出

  (支出負担行為の整理の時期等)

   第67条 支出負担行為として整理し、確認を受ける時期、支出負担行為の範囲及び支出負担行為に必要な書類は、別表第2に定めるところによるものとする。

    2 前項の規定にかかわらず、別表第3の区分欄に掲げる事項に係る支出負担行為に該当するものについては、同表に定めるところによるものとする。

  (支出負担行為書の作成等)

   第68条 支出負担行為をしようとする者は、支出負担行為をしようとするときは、支出負担行為書により支出負担行為の決議をし、会計管理者に送付しなければならない。

    2 前項の規定にかかわらず、次に掲げるものについては、支出負担行為兼支出命令書を作成するものとする。

     (1) 支出負担行為として整理する時期が、支出決定のときとなっているもの

     (2) 支出負担行為として整理する時期が、請求のあったときとなっているもの

  (支出負担行為の確認)

   第69条 会計管理者は、前条第1項の規定により支出負担行為書の送付を受けたときは、次に掲げる事項を審査し、適正と認めたときは、支出負担行為の確認をしなければならない。

    (1) 予算額及び予算配当額を超過しないこと。

    (2) 予算執行計画に適合していること。

    (3) 歳出の会計年度所属区分及び予算科目に誤りがないこと。

    (4) 予算の目的に反していないこと。

    (5) 金額の算定に誤りがないこと。

    (6) 契約締結方法等は適法であること。

    (7) 特に認められたもののほか、翌年度にわたることはないこと。

    (8) 前各号に掲げるもののほか、法令その他に違反していることがないこと。

    2 前項の場合において、会計管理者は、確認することを不適当と認めたときは、文書又は口頭により理由を付して当該書類を支出命令者に返付しなければならない。

    3 第1項の規定による確認は、会計管理者が支出負担行為書の所定欄に認印して行うものとする。

  (請求書)

   第71条 支出命令者が支出をするには、債権者の請求書によらなければならない。

    2 請求書は、請求の内容を明確にし、債権者の記名及び押印又は署名がなければならない。ただし、債権者からの請求であることが確認できる場合で、請求書の空欄に確認者がその所属及び氏名を記載したときは、押印又は署名を省略し、記名のみとすることができる。

    3 請求書が債権者の代理又は代理人名義のものであるときは、その資格権限の表示がなければならない。

    4 支出命令者は、前項の規定により表示された資格権限を認定し難いときは、その資格権限を証する書類を徴して、これを確認しなければならない。

    5 債権者が代理人に請求権又は領収権を委任したときは、請求書に委任状を添えさせなければならない。

    6 債権の譲渡又は継承があった債務に係る支出については、請求書にその事実を証する書面を添えさせなければならない。

  (支出命令)

   第73条 支出命令者は、前2条の請求書及び支出調書(以下「請求書等」という。)の提出を受けたときは、その内容を調査し、適当と認めたときは、支出命令書により支出の命令をしなければならない。

    2 支出命令者は、前項の規定により支出命令をするときは、請求書等その他参考になる書類を支出命令書に添付して会計管理者に送付しなければならない。

    3 支出命令の金額のうち、法令の規定により支払の際控除し、歳入歳出外現金に受け入れるべき金額があるときは、支出命令書の控除命令額の欄に記載することにより控除金の控除及び歳入歳出外現金の受入れの命令に代えるものとする。

  (支出命令書の添付書類)

   第74条 支出命令書に添付する書類は、別表第2に定めるところによるものとする。

    別表第2 (第67条、第74条関係)

    備考 この表に定めるところにより難い経費に係る支出負担行為については、その性質により、類似のものの例により整理するものとする。

(3) 認定事実

 本件請求につき、職権調査、証拠などの確認、証憑突合、帳簿突合など、請求人の陳述、関係人調査及び監査対象部局への事情調査等によって当職が認定した事実は、以下のとおりである。

  鏡野町では、鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙において、各候補者が業者と有償契約した選挙運動用ポスター作成契約にもとづいて、条例で定められた限度額の範囲内で、各業者に直接その費用を支払っている。

  これは、選挙公営の一つで、その概略は、当時の鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例によれば、ポスター作成の公費負担は単価3,417円にポスター掲示場の数の相当数110を乗じた額である

  375,870円が限度となる(枚数はポスター掲示場の数と同数の11 0枚を限度とする。)。単価はポスター作成単価541円31銭にポスター掲示場の数の相当数110を乗じて得た金額に316, 250円を加えた金額をポスター掲示場の数で除して得た金額

  (1円未満の端数がある場合には、その端数は1円とする。)で算出されている。

  公費負担を受けるための手続については、選管事務局等の説明、鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例並びに同規程のとおり行われていた。

  町は業者等から提出された請求書などを審査し、適正であれば、その費用を各業者に直接支払っている。

  選管事務局職員からの事情聴取により、公費で負担する選挙運動用ポスター枚数は110枚で、自費で作成するポスターの枚数、種類には制限がない。当該選挙においては、公費負担対象者2名の方が、公費負担対象枚数を超えての契約を締結していたが、

  公費対象枚数により公費の支出を行っている。

  また、単価限度額の3,417円を超えての契約締結者はいなかった。

  本請求に係るポスター代の公費負担については、公職選挙法等の関係法令の規定により、委員会において審査を行った選挙運動用ポスター作成契約届出書等の書類を踏まえて、ポスター作成業者からの請求書等の必要書類を審査した上で支出したものであって、

  定められた公費負担限度単価、公費負担限度枚数であり、各候補者の公費負担基準限度額を超えて負担したものは認められず、適正に執行されていた。

  また本件公金の支出に係る事務手続についても、鏡野町財務規則等関連法令等を遵守して、請求書が必要な要件を具備していることを確認した上で、支出負担行為及び支出命令が適正に執行されている。

  本監査における客観的判断の参考とするため、近隣類似町選挙管理委員会に対し、選挙運動用ポスター作成の公費負担に関する条例上の上限単価、直近の選挙における掲示場箇所数、上限単価で支払った件数、請求単価の最高額、最低額及び平均額について照会を行った。

  その結果、各団体ともに条例で定めた上限単価には差異があり、また、同一団体内においても請求単価の最高額と最低額との間で相当程度の差が認められた。

  これは、各候補者が業者と締結する個別の私法上の契約の内容(デザイン、撮影、印刷品質、用紙、付随業務等)の違いによるものと推察され、業者間、契約間で金額に幅が生じることは、近隣類似町においても一般的な実態であることが確認された。

  本町における公費負担額の状況は、近隣類似町の運用と比較しても、特段に乖離するものではないと認められる。

(4) 監査委員の判断

 ア 財務会計行為が違法又は不当であるか

  本件選挙運動用支出は、違法又は不当であって鏡野町長が返還を求めるべきものなのかについては、本件の支出は、前掲の条例等に基づく一定の手続を経由して、業者からの請求に対して行われている。

  鏡野町財務規則では、第3章支出の中で、第67条で支出負担行為の整理の時期等について、第68条で支出負担行為書の作成等について、第69条で支出負担行為の確認について、第73条で支出命令について定めている。

  本件支出については、選管事務局で作成された支出負担行為及び支出命令には必要関係書類が添付されており、また、鏡野町議会鏃員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例に定める上限額及び予算の範囲内で、

  各業者から請求された金額を支出しており、選管事務局等からの事情聴取も含めて総合的に勘案したところ、請求から支出に至るまでの手続に不備は一切認められず、本件財務会計行為は条例及び関係法令に則り適正に執行されているものと認められる。

 イ 最少経費最大効果の原則違反について

 (ア)請求人の主張

  請求人は、公費支出を受けた候補者の選挙運動用ポスター代金は、地方自治法第2条第1 4項に定める「最少の経費で最大の効果」の原則に反し、違法かつ不当であると主張している。

  また、刑法第246条(詐欺罪)に関しては、請求業者が公費負担の上限額になるよう、意図的に選挙ポスター代を水増し請求したとしか考えられず、同罪に抵触する可能性があると主張している。

 (イ)選挙運動用ポスター代金における公費支出についての違法性の特定

  「地方自治法第2条第14項、地方財政法第4条第1項は、地方自治体が経費の支出をするに当たっての一般的原則を定めたものであるが、それは基本的には本件条例において公費負担額の上限を定めるに当たり考慮されるべきものであり、

  ポスター発注候補者がポスター受注業者との間でポスター作成に係る請負契約を締結するに当たっての私法上の規範になるものとはいえない。」(東京地方裁判所平成24年(行ウ)第496号平成26年10月28日判決参照)

  これを本請求における選挙運動用ポスターの作成発注者である候補者と受注者であるポスター作成業者との間での選挙運動用ポスター作成契約の締結についてみたとき、各契約は私法上の契約であり、

  その契約金額が地方自治法第2条第14項、地方財政法第4条第1項に違反した違法又は不当なものとは言い得ない。

  また、請求人は、請求業者が公費負担の上限額になるよう、意図的に選挙ポスター代を水増し請求したとしか考えられず、刑法の詐欺罪に抵触する可能性があると指摘しているが、瑕疵を証する個別の事案の証拠書類が提出されておらず、

  あくまで推測の域を出ないため、条例違反契約など具体的不正を立証することができないことから、本監査の調査対象外とした。

  加えて、刑法の詐欺罪に関する措置は、地方自治法第242条第1項に規定する住民監査請求において求めることができる措置に該当しないため、住民監査の対象とはならないものと解する。

 ウ 損害又は不利益

 (ア)選挙運動用ポスター代金における請求人の主張

  請求人は、鏡野町は市場価格にそぐわない過剰な出費を行っており、住民に不利益が生じていると、次のように主張している。

  公費負担の上限額は、おそらく公職選挙法第14 3条の逐条解説(当時の衆議院小選挙区選出議員又は参鏃院選挙区議員の選挙の場合)の式に則って算出し、令和2年12月28日制定の条例第31号(鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例)

  を基に決定したものであると思われるが、明らかに実勢価格と比べあまりにも高価であると考える。

  本町のように規模の小さい町ほど、ポスター掲示場の数が少ないため、計算上ポスター単価が高くなり、より実勢価格と乖離する傾向がある。

  一覧表によると公費請求がある候補者で比較すると、最低金額(93, 896円)と最商金額(375,870円)との間で約4倍の差があり、公費負担なしの最低金額(39,499円)も含めて比較すると、約9.5倍の差がある。

  加えて、一部業者は公費上限ギリギリの請求をしており、明らかに意図的に金額を釣り上げているとしか考えられない(20名中10名) 。

  当方で調べたところによると、本町と同じ計算方法(公職選挙法第14 3条の逐条解説に準拠した式)で算出している自治体がある一方で、独自の式にて算出している自治体や、あらかじめポスター単価の上限額を決めている自治体がある。

  また、地方議会の中にも、選挙ポスターの金額について疑問を呈している議員もいる。よって、地方自治法(第2条第14項)に書かれている条文の観点から、現状の公費負担額は不適当であると考える。

 (イ)選挙運動用ポスター代金における公費支出についての損害又は不利益の特定

  「選挙運動用に用いるポスターは、候補者が有権者に対して単に自己の氏名や顔写真を表示することのみならず、人柄や政策、信条等をも表現し、支持を訴えかけるためのきわめて重大な媒体であるから、

  ポスターの作成に際しては、各候補者が様々な要素を考慮して、写真撮影、デザイン、用紙、印刷等に工夫を凝らすことが想定され、これらに応じてポスター作成費も大きく変わり得ると考えられる。

  そうすると、原告が提出する見積価格等の費用と比較して、ポスター作成業者の請求額が高額であるからといって、直ちにポスター受注業者がポスター発注候補者と共謀して、ポスター代について過大な請求をしたものとまで評価し得るものではない。」

  (東京地方裁判所平成24年(行ウ)第49 6号平成26年10月28日判決参照)

  これを本請求における実勢価格との乖離の点でみると、確かに本町の場合、国の示す基準に則り、条例で上限額が定められている。これは、本ポスターの性質上、上記のとおり一律の基準を設定することが困難であるため、

  国の示す基準を担酌して決定されているものと思料する。

  県下の例を見ると、県下10町のうち、国の基準に基づき定めている自治体は6町、独自の基準で定めているのは4町となっており、各自治体で様々である。

  条例とは、地方公共団体が憲法と法律の範囲内で議会により制定された自治立法であり、住民の権利義務や行政の役割を具体的に定めた法規である。

  このことから、いずれの自治体においても、地域の実情を考慮し、住民の代表である議員によって構成される議会において審議し、決定されたものであり、各自治体間で公費負担額に差異が生じることは、

  地方自治の本旨に照らし、何ら不合理なものではないと考えられる。

  また、印刷業者が「意図的に金額を釣り上げている」との主張については、条例において公費負担の上限額が明確に定められていることにより、過度な負担が町民に転嫁されないよう制度的に担保されているものと認められる。

(5) 結論

 以上のことから、本件請求には理由がないと認め、地方自治法第242条第5項の規定により、前掲1 「主文」のとおり決定する。

意見

 これまで公費負担に係る選挙費の返還請求に係る住民監査請求監査を実施してきたが、これらのことを踏まえ、今回の監査結果において以下のように意見を付す。

 前述のとおり、鏡野町議会議員及び鏡野町長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例に基づく公費負担については、地方自治法第2条第14項及び地方財政法第4条第1項に違反しているとは認められない。

 しかしながら、公費負担として支出する公金は、町民の税金を原資としていることに鑑み、候補者各位には、公費負担の対象となる選挙運動費用の支出に当たり、経済性、効率性に配慮することも必要であると考えられる。

 委員会においては、選挙公費負担制度について「選挙の手引き」で各候補者に説明しているが、条例に記載している公費負担の限度額は、あくまで公費負担する金額の上限を示したものであり、支出の基準ではない。

 公金の支出を伴うものである以上、可能な限り経済性・効率性に配慮を求める内容を盛り込み、より一層周知・啓発されることを望む。

 加えて、選挙用ポスター作成費用については、法令上の違法性は認められないものの、町民の信頼をより確保するためには、その費用の内訳を明らかにすることが望ましい。

 よって、委員会においては、ポスター作成費用の請求者に対し、費用の総額のみならず、撮影費、企画費、印刷費、用紙代等の費目別の内訳が明らかとなる書類の提出を求めるよう、運用の改善を図られたい。

 なお、本監査の過程において、契約書のうち1件及び選挙運動費用収支報告書のうち1件に、押印漏れ、明らかな記載誤り(錯誤)が判明したため、速やかに修正されたいことを付記する。

令和8年5月22日

鏡野町監査委員 赤木郁夫