(令和8年8月3日提訴)

【被告】   岡山県(代表者 知事 伊原木隆太)

【事件番号】 令和8年(ワ)第814号  (岡山地方裁判所第1民事部)

【現状】   次回期日は、令和8年10月19日(月)

事件概要

捜査情報が政治的対立関係にある鏡野町へ漏洩されたことにより政治的・社会的評価に重大な悪影響を受ける具体的危険にさらされ、本件提訴に至った。

別訴(政治活動妨害)の詳細は、(鏡野ドーム職務質問事件(正式名称:政治活動の妨害および名誉棄損による慰謝料請求事件)をご参照ください。

事件後の経過

令和8年8月25日、岡山地方裁判所に提訴。

訴訟後の主な経過

次回期日は、令和8年10月19日(火)10:00~

今に至る

訴訟等の資料

一部、分かりやすいように文言を修正、省略しています。


<訴 状>

訴 状

令和8年  8月  25日

〒700-8570 岡山県岡山市北区内山下2-4-6

  被告 岡山県

  上記代表者 知事 伊原木 隆太

訴訟物の価額  金 30万円

貼用印紙額    金 3千円

請求の趣旨

 1.被告は原告に対し,金30万円を支払え

 2.訴訟費用は被告の負担とする

との判決を求める。

請求の原因

第一 当事者について

 1.原告は,政治団体「かがやけかがみの」の代表者であり,2025年に鏡野町長選挙に立候補した経歴を有する。

 2.被告は,原告が路上において政治活動を行っているのを妨害した者である。

第二 事件の概要

 1.原告は令和7年9月7日午前8時20分頃,鏡野町内の鏡野多目的屋内運動場(かがみのドーム)の入り口付近から約100m離れた場所において政治活動を行っていたところ,警察官らしき人物が現れ,政治活動の中止を命じ、強制的に演説を制止された。

 2.1の時点において,かがみのドームでは鏡野町産業まつりが行われており,警護体制が敷かれる中,政治家が多数来場する政治的緊張の高い状況であった。主な来賓として以下のような政治家が参加していた。

  衆議院議員(当時 財務大臣) 加藤 勝信

  鏡野町長           瀬島 栄史

  鏡野町議会議長        原 章倫​

  岡山県議会議員        本山 紘司

 3.その後,原告が提起した別訴事件(政治活動妨害および名誉毀損による慰謝料請求控訴事件)において,被告(岡山県警)は,鏡野町選挙管理委員会が内部資料として保有していた選挙ポスター掲示場の写真(別訴乙号証(以下【甲第2号証】と書く。))を提出した。

  ※以下,【甲第2号証】内の乙第1号証は【甲第2-1号証】,乙第2号証は【甲第2-2号証】,乙第3号証は【甲第2-3号証】と書く。

 4.原告は令和8年7月13日に,鏡野町に対し,以下のような行政文書の開示請求を行った。なお,[  ]内は原告が加筆したものである。【甲第3号証】

  ① 令和7年9月7日,鏡野町が路上で政治活動を行っている者に対して警察に通報した事案(政治団体の代表は請求者本人)

  ② 岡山県地方裁判所津山支部事件番号令和8年(ワ)第1 2号 [いわゆる本訴でいう「別訴事件」のこと]

  上記のいずれかに関連して,鏡野町が岡山県(岡山県警・代理人を含む)と行った協議・連絡・相談に関する記録一式(記録の形式は、議事録・メモ・メール・FAX・提出資料・説明文書など、名称・様式を問わない)。

  また,本件に関して鏡野町が支出した費用の根拠となる資料(契約書・見積書・支払決議書・支払証拠書類) 。

 5.4に対し,鏡野町は指定文章の存在を明示した上で,以下のように非開示決定を行った。【甲第3号証】

  〈行政文書の名称〉

   1)鏡野町が岡山県警(代理人も含む)に提出した資料及び打ち合わせ議事録

   2)本事件に関した鏡野町が支出した贄用がわかる資料

  〈開示しない理由〉

   請求のあった行政文書は、鏡野町情報公開条例第7条2号及び5号及び7号に該当するため。

  なお,【甲第3号証】の件は,別訴にて鏡野町を相手に提訴済である。(行政文書非開示決定処分取消請求事件)

 6.原告は,5項の結果を受け,確実に【甲第2号証】の資料のうち,少なくとも【甲第2-2号証】の資料は,被告が被疑者情報を提示した上で,鏡野町が提示したものであると判断し,本訴を行ったものである。

第三 原告の主張

 1.原告は,令和7年3月30日に,鏡野町長選挙に使った「いわゆる選挙の七つ道具」を鏡野町役場に返却に行った際,受け付けた鏡野町選挙管理委員会(鏡野町総務課が所掌)の町職員(以下「選管職員」と書く)に対して【甲第2-2号証】の件について

   あまりにも「衝撃的」な選挙ポスターだったため,町民から苦情が来ていないか質問をした。

 2.選管職員より以下のことを言われた。

 (1)あのポスター(【甲第2-2号証】のポスター)について,数名の町民の方より相談があった。

 (2)確認のため,歩いて現場に行き(鏡野町役場から歩いて数分とところにあるので),現場確認を行った。

 (3)あのポスターを撮影し,県選管に送付し,問題がないかの確認を行った。

  そのあと,原告は,「あの選挙ポスターは公選法として問題はなかったんですね」と聞き,選管職員は「問題はなかった」

 3.少なくとも,1項,2項より,鏡野町が【甲第2-2号証】の選挙ポスターの写真を所有していたのは確実である。

 4.【甲第2-2号証】の選挙ポスターの記載内容の概要は,以下のとおりである。

  (1)鏡野町が母を追い込みました

  (2)霊安室の写真

  (3)令和6年11月14日に鏡野町職員および関係者のせいで自宅で首吊り自殺をしました。事情は選挙演説にて。

  (4)母親の棺に入れられているときの写真

  (5)鏡野町職員および関係者の方々へ もしあなた方に「自責の念」があるのであれば、家に来なくてもいいので、この選挙ポスターに向かってご冥福をお祈りしてください。

 5.【甲第2-2号証】の現場写真自体(現在,ポスターのみの写真だけはインターネットに掲載している),4項の内容からして主要なSNSには掲載できないものであり,現場の背景を含めた写真については倫理上インターネット上には掲載できない写真であり,

  一般に入手できないものである。

 6.仮に,他の人(鏡野町職員以外)が撮影していたとしても,撮影者本人に「名前を提示した上で」聞かない限り,得られない情報である。

 7.よって,【甲第2-2号証】は,被告が被疑者情報を提示した上で,鏡野町より入手したと推認するのが妥当である。

 8.鏡野町でしか入手できない資料が警察の手に渡っていること,原告の情報公開請求では不開示とされていることを踏まえると,警察が原告の捜査情報(被疑者情報)を鏡野町に漏洩し,

  その漏洩情報を前提として鏡野町が選挙管理委員会内部資料を警察に提供したものと推認される。

  すなわち,「警察 → 鏡野町 → 警察」という情報循環は,警察による捜査情報漏洩を起点として成立したものである。

  なお,被告が別訴で提出した【甲第2号証】のうち,本件で問題となるのは鏡野町選挙管理委員会が内部資料として保管していた【甲第2-2号証】のみである。

  別訴における【甲第2-2号証】以外の【甲第2号証】は,警察法第2条が定める警察活動の目的とは無関係の資料であり,本件における捜査情報漏洩の有無を判断する資料ではない。

 9.原告は,前記現場対応に加え,捜査情報が政治的対立関係にある鏡野町へ漏洩されたことにより,選挙管理委員会内部で「問題候補」として扱われるなど,政治的・社会的評価に重大な悪影響を受ける具体的危険にさらされ,本件提訴に至った。

第四 不法行為

 1.警察法58条違反(守秘義務)

  警察は,別訴事件発生の後に鏡野町役場を訪問し【甲第3号証】,本事件とは「第三者と思われる鏡野町」に対し,被疑者(犯罪の疑いをかけられた者)の情報を出した上で,鏡野町の選挙管理委員会しか知り得ない情報【甲第2-2号証】を入手している。

  また,【甲第2-3号証】も鏡野町から入手していると疑わざるをえない。

  警察法58条は「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」と規定している。

  被疑者段階の情報は,逆恨み・報復の危険があり最も厳重に管理される捜査情報である。

  本件では,別訴事件において,鏡野町の主催するイベントにおいて原告が不都合を生じさせたと鏡野町側が受け止めている状況下で,被告はその鏡野町に対し被疑者(原告)の捜査情報を漏洩している。

  原告は鏡野町長選挙における候補者であり,現鏡野町長(当時の対立候補)との政治的対立関係が存在する。

  このような関係性の下で原告の捜査情報が鏡野町に漏洩すれば,当該情報が政治的・社会的に不適切に利用され,原告が将来にわたり不利益・不当な扱いを受ける危険が極めて高いことは明白である。

  捜査情報をこのような第三者(鏡野町)に漏洩する行為は,原告に対する不利益の危険を現実化させるだけでなく,公権力が特定の政治的対立関係に介入する結果を招く極めて重大な違法行為であり,警察法58条が守秘義務を課している趣旨そのものを根底から没却するものである。

  よって,警察法58条に違反する。

  以下追記する。

  警察法58条は「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」と規定しており,公務員同士であっても、職務上の必要性がない限り秘密の提供は許されない。

  鏡野町は本件捜査の当事者ではなく、捜査権限も捜査協力義務も有していない。捜査情報を知る必要性は全く存在しない。

  さらに原告は鏡野町長選挙の候補者であり,現鏡野町長(当時の対立候補)との政治的対立関係が存在する。

  このような利害対立の下で捜査情報を鏡野町に提供する行為は,職務上の必要性を欠くだけでなく,当該情報が政治的に不適切に利用される危険を著しく高めるものである。

  しいては,被告が政治的介入を行ったと疑われても不思議ではない。

  よって,公務員同士であっても、職務上の必要性がない限り,秘密の提供は警察法58条違反である。

 2.個人情報保護法16条違反(個人情報の目的外利用)

  被告は、被疑者(原告)の個人情報を鏡野町に伝達した。鏡野町への被疑者(原告)の情報開示は捜査目的に該当せず,個人情報の目的外利用である。

  よって,個人情報保護法に違反する。

 3 地方公務員法34条違反(守秘義務)

  行政職員が,捜査情報を扱う権限がないにもかかわらず,原告に関する情報を通報者に伝達した。

  地方公務員法34条は「職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」と規定する。

  行政職員は捜査情報を扱う権限を持たず、通報者への情報開示は守秘義務違反である。

  よって,地方公務員法34条に違反する。

 4 民法709条(不法行為)

  被告が,第三者(鏡野町)に原告の得体(被疑者段階の情報)を伝達し,原告の人格権・名誉・プライバシーを侵害した。

  民法709条は「故意または過失により他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は損害賠償責任を負う」と規定する。

  通報者への情報開示は,逆恨み・報復の危険を生じさせる重大な権利侵害であり,警察法・個人情報保護法・地方公務員法の各違反行為に該当する。

  よって,民法709条の不法行為が成立する。

第五 結語

 よって,被告は原告に対して,金30万円の支払いを求める。

以上,


<被告答弁書>

令和8年10月5日

被告訴訟代理人弁護士 青 山 智 紀

〒700-0816

岡山市北区富田町二丁目6番15号 板野法律事務所(送達場所)

第1 請求の趣旨に対する答弁

 1 原告の請求を棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 との判決を求める。

第2 請求の原因に対する認否

 1 「第一 当事者について」

 (1) 1は認める。

 (2) 2は否認ないし争う。被告が原告の政治活動を妨害した事実はない。

 2 「第二 事件の概要」

  (1) 第二の1

    令和7年9月7日午前8時20分頃の原告の行動については不知。

    津山警察署かぐらお交番の警察官1名が午前9時23分頃にかがみのドームの入口付近にパトカーを停車させ、本件現場に徒歩で移動し、原告に職務質問を行ったことは認めるが、政治活動の妨害は行っていない。

  (2) 第二の2

    当日、「かがみのドーム」でイベントが行われていたことは認める。

    なお、イベントは合併20周年を記念した「2025鏡野町産業まつり」である(甲2-1)。

  (3) 第二の3

    別訴(岡山地方裁判所津山支部令和8年(ワ)第12号 政治活動妨害および慰謝料請求事件 令和8年8月21日被告勝訴判決)において、選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)を証拠提出したことは認めるが、その余は否認する。

    選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)は鏡野町から提供を受けたものではなく、被告が撮影したものである。

  (4) 第二の4、5

    原告が鏡野町に対して行政文書の開示請求をしたこと及び同請求に対する鏡野町の対応は不知。

  (5) 第二の6

    否認する。選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)は鏡野町から提供を受けたものではなく、被告が撮影したものである。

 3 「第三 原告の主張」

  (1) 第三の1、2

   原告と鏡野町のやりとりについては不知。

  (2) 第三の3

   否認する。選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)は被告が撮影したもので、鏡野町に提供した事実はない。よって、鏡野町は所有していない。

  (3) 第三の4

   認める。

  (4) 第三の5、6

   不知。

  (5) 第三の7から9

   否認する。選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)は鏡野町から提供を受けたものではなく、被告が撮影したものである。原告の主張は事実を誤認したものである。

 4 「第四 不法行為」から「第五 結語」

   争う。

第3 被告の主張

 1 捜査情報を漏洩した事実はないこと

  原告は、選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)について、被告が鏡野町に捜査情報を漏洩し、その漏洩された情報に基づき、鏡野町から提供を受けたものであるかのように縷々主張している。

  しかし、前記第2の2⑸のとおり、原告の主張は、その入手経路について誤認し、その誤った前提から被告の違法性を導こうとしているものであり、全くの失当である。

  なお、写真の撮影者が被告であることは、別訴においても証拠説明書(乙1)に明示している(ただし、当初の証拠説明書においては、写真上のポスター作成者が原告であるという趣旨で作成者を原告と表記した。これを写真の撮影者という趣旨で被告と訂正したものである)。

  選挙ポスター掲示場は、選挙管理委員会が公衆の見やすい場所に設置するものであり、一般に公衆の目に触れることが予定されているもので、当該撮影について、法令上これを一般的に撮影するのを規制し、または特別な許可を要する旨の規定も存在せず、

  違法な撮影に当たるものでもない。

 2 結語

  以上のとおり、選挙ポスター掲示場の写真(甲2―2)について、被告が捜査情報を鏡野町に漏洩して入手したものではなく、被告が撮影して証拠資料にしていたものであり、

  被告による選挙ポスター掲示場の写真撮影自体にも違法性はなく、別訴における証拠資料として提出したもので、いかなる意味でも違法ではない。

  よって、原告の請求は理由がないことが明らかであるから、すみやかに棄却されるべきである。

以 上


<原告第1準備書面>

令和8年  10月  8日

第1 被告答弁書の主張について

 被告答弁書(第3 被告の主張)を確認した上で、被告の主張は以下の内容であると推察した。

 “選挙ポスター掲示場の写真【甲第2-2号証】は、

 (1)被告が撮影して証拠資料にしていたもの

 (2)選挙ポスター掲示場の写真撮影自体にも違法性はない

 だから、被告が捜査情報を鏡野町に漏洩して入手したものではない“

 本訴では撮影の違法性を争っている訳ではないので、(2)の件については争点外であるという主張だけにとどめる。

第2 撮影日時の矛盾

 鏡野町長選挙の執行日は令和7年3月30日である。

 別訴事件(事件番号:広島高裁岡山支部 令和8年(ネ)第166号政治活動の妨害および名誉棄損による慰謝料請求控訴事件)が発生したのは令和7年9月7日である。

 令和7年9月7日時点には選挙ポスター掲示場は既に撤去されており、存在していない。

 よって、被告が主張する「別訴事件を理由として撮影した」という説明は、時系列上成立しない。

第3 撮影の目的が不明確

 被告は【甲第2-2号証】を自ら撮影したと主張するが、被告が選挙ポスター掲示場を撮影する合理的な職務目的を一切説明していない。

 また、撮影時期・撮影理由・撮影の必要性の根拠が示されていない。

 公職選挙法違反に関する問い合わせがあったとしても、まずはポスター掲示場を管理している鏡野町選挙管理委員会が現場確認等を行った上で対処するのが当然の流れである。

 そもそも、選挙ポスター掲示場の管理権限は鏡野町選挙管理委員会にあり、警察が独自に掲示場を撮影する職務権限は存在しない。

 仮に、選挙活動における逮捕(公職選挙法違反)その他の強制措置を前提として撮影したのであれば、選挙活動に対する不当な介入の疑いを生じさせるが、その点も不明である。

 加えてかくと、原告は公職選挙法の疑いなどを理由として、【甲第2-2号証】の件については取り調べを受けていないし、検察庁から「事件処理通知」も来ていない。

第4 結言

 以上より、被告の説明は時系列・撮影目的のいずれの点からも成立せず、本来の争点を捉えないまま失当な反論に終始している。

第5 求釈明

 証拠資料とは「何の事件」の「何の証拠資料」であったか示せ

 撮影目的が「別訴事件の発生」でないことは明白である。

 被告が「証拠資料」と主張するのであれば、「何の事件」の「何の証拠資料」であるか示すべきである。

以上、