(令和8年6月15日提訴)
【被告】 鏡野町(代表者 町長 瀬島栄史)
【事件番号】 令和8年(行ウ)第14号 (岡山地方裁判所第1民事部、合議体で審理・裁判)
【現状】 次回期日は、令和8年10月6日(火)(岡山地裁202号法廷)
事件概要
この事件は、令和8年5月22日、選挙ポスター代に関する住民監査請求に対し棄却されたため、住民代表訴訟を起こしたものである。
事件までの詳細は、(【終了案件】選挙ポスター代に関する住民監査請求)をご参照ください。
事件後の経過
令和8年6月15日、岡山地方裁判所に提訴。
訴訟後の主な経過
次回期日は、令和8年10月6日(火)10:30~(岡山地裁202号法廷)
今に至る
訴訟等の資料
一部、分かりやすいように文言を修正、省略しています。
<訴状>
令和 8年 6月 15日
岡山地方裁判所 御中
被告 鏡野町 代表者 町長 瀬島 栄史
公金支出金返還請求事件
訴訟物の価額 金 160万円(算出不能)
貼用印紙額 金 1万3千円
請求の趣旨
1. 被告は、令和7年3月30日施行の鏡野町長選挙および同日施行の鏡野町議会議員選挙における選挙運動用ポスター作成費に関し、鏡野町に生じた損害について当該公金支出に関与した鏡野町職員に対し請求せよ。
2. 被告は、株式会社三勝に対し1,007,090円を請求せよ。
3. 被告は、株式会社マテリアに対し143,760円を請求せよ。
4. 被告は、そとかわデザインに対し143,870円を請求せよ。
5. 被告は、株式会社ハジメクリエイトに対し143,870円を請求せよ。
6. 被告は、本件訴訟に要した費用について、当該公金支出に関与した鏡野町職員に対し請求せよ。
7. 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
第一 当事者について
1. 原告は、岡山県苫田郡鏡野町の住民である。
2. 被告の代表者は、令和7年3月30日施行の鏡野町長選挙において当選した、現在の鏡野町長である。
第二 本件提訴に至る事情
1. 本件は、地方自治法第242条の2第1項第4号に基づく住民訴訟である。
2. 原告は、令和7年3月30日施行の鏡野町長選挙および同日施行の鏡野町議会議員選挙(以下「本選挙」という)における選挙運動用ポスター作成費について、情報公開請求を行い、候補者ごとの公費負担額を確認した。
3. 2を確認したところ、候補者間でポスター作成費に著しい価格差が存在し、さらに複数の候補者が公費負担の上限額に極めて近い金額で請求していることが判明した【甲第1号証】。
これは実勢価格と大きく乖離しており、不自然かつ不当な公金支出であると考え、原告は被告に対し住民監査請求(以下「本件請求」という)を行った【甲第4号証】。
4. 本件請求を行ったところ、本件請求は棄却された【甲第6号証】ため、本訴を行うに至った。
第三 本件公金支出の違法性
1 実勢価格と著しい乖離が存在すること
原告は、各候補者のポスター費用額を分類するために、本選挙における選挙運動用ポスター作成費について、各候補者の契約金額一覧【甲第1号証】、および実勢価格の検証【甲第2号証】に基づき、以下のとおり整理した。
A.自作+α
B.ネット印刷業者
C.街中の印刷業者 [低価格帯]
D.企画会社
E.街中の印刷業者 [高価格帯]
このうち、実勢価格として妥当と考えられるC項の 132,000円(@1,200) を基準とし、仮にデザイン料を10万円と最大限に見積もったとしても(相場は3万円程度ではあるが)、
本件ポスター作成費の妥当額は、132,000円に10万円を加算した232,000円と評価できる。
なお、デザイン料の実勢価格については、外部委託相場を一覧化した【甲第3号証】に示すとおり、単発のポスターデザインにおいて10万円は相場を大きく超える高額である。
一般的な単発のポスターデザイン料は3〜5万円程度が中心であり、クラウドワークス等の実例でも3万円台が多数を占める。
2 上限額ギリギリの請求が多数存在し、不自然であること
【甲第1号証】によれば、以下の4社が公費負担の上限額(375,870円)またはその直下(375,760円)で請求していた。
A. 株式会社三勝 (候補者7名分を契約)
B. 株式会社マテリア (候補者1名分を契約)
C. そとかわデザイン (候補者1名分を契約)
D. 株式会社ハジメクリエイト (候補者1名分を契約)
これら4社はいずれも、試算額232,000円を大幅に超える金額を請求しており、その差額は 1人あたり143,870円 に達する。
特に、株式会社三勝は候補者7名分すべてが同一金額(375,870円)であり、候補者ごとのデザイン・仕様の差異を考慮しても、偶然とは考え難い一律の価格設定であった。
3 請求額が妥当額を大幅に超える合理的理由が見当たらないこと
【甲第1号証】に示すとおり、1項記載のD,E項に該当する業者の請求額は,C項の妥当額(132,000円)に比べ倍以上 の金額となっていた。
また、デザイン料の相場については、クラウドワークスの外注価格一覧【甲第3号証】により,3万円台が中心であることが確認できる。
しかし、本件では以下のような事実が認められ、デザイン料を含めても232,000円を超える合理的理由が見当たらない。
A. 前回ポスターの流用
B. 文言・配置の微修正のみである事例
C. 同一業者による一律の上限請求
さらに、情報公開請求に対し、候補者名が分からないようにするため黒塗りにして情報開示を行うなど、公費支出の透明性を欠く対応が行われている【甲第4号証】。
以上の事情から、本件ポスター作成費が実勢価格を大幅に超えていることについて合理的な説明が付かず、財務会計上の適正性を欠く支出であると考えられる。
4.法的評価(地方自治法2条14項違反)
1〜3項で述べたとおり、本件選挙運動用ポスター作成費については
① 実勢価格(妥当額232,000円)との著しい乖離
② 上限額ギリギリの一律請求という不自然な価格設定
③ デザイン料を含めても高額となる合理的理由の不存在
④ 情報公開における不透明な対応
といった事情が認められる。
地方自治法2条14項は「地方公共団体の財務会計は、最少の経費で最大の効果を挙げるように運営されなければならない」と定めており、公費支出にあたっては実勢価格に照らした合理性・必要性 が求められる。
しかし本件では、実勢価格を大幅に上回る金額が多数の候補者について一律に請求されており、その差額について合理的な説明が付かない。
また、監査委員会の判断は、実勢価格の調査や価格形成過程の検証を欠いたまま、「他自治体と同様である」という形式的な理由に依拠するもので、財務会計上の適正性を基礎づけるものとはいえない。
さらに、本件のように実勢価格から大きく乖離した公金支出が特定の業者に対して継続的に行われている状況は、公務員が「全体の奉仕者」であることを定めた憲法15条の趣旨にも照らし、その公正性・中立性を損なうおそれがある。
また、地方自治法2条16項、17項が要求する「法令に適合した財務会計処理」の原則にも反する疑いが強い。
以上を総合すれば、本件公金支出は地方自治法2条14項が要求する財務会計上の合理性や必要性を欠くものであり、さらに憲法15条および地方自治法2条16項、17項の趣旨にも反するものである。
したがって、本件支出は財務会計上の適正を欠き、裁量権の逸脱・濫用に該当する違法かつ不当な公金支出と評価せざるを得ない。
第四 結言
述べたとおり、本件選挙運動用ポスター作成費については、実勢価格との著しい乖離、上限額ギリギリの一律請求という不自然な価格設定が認められる。
さらに、合理的理由の欠如、情報公開における不透明な対応など、財務会計上の適正性を欠く重大な問題が認められる。
地方自治法2条14項が求める「最少の経費で最大の効果を挙げる」という財務運営の基本原則に照らしても、本件公金支出は到底容認し得るものではなく、憲法15条および地方自治法2条16項、17項の趣旨にも反する違法かつ不当な公金支出である。
よって原告は、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被告に対し本件支出の違法性を確認し、適切な是正措置を講ずるよう求めるものである。
以上,
証拠方法
甲第1号証 各候補者が選挙ポスターに費やした費用
・候補者間でポスター作成費に著しい価格差が存在していること
・複数の候補者が公費負担の上限額に極めて近い金額で請求していること
甲第2号証 各候補者の選挙ポスター代 の検証
・各候補者の選挙ポスター代の検証を行った文書
甲第3号証 ポスターデザインの 価格表
・ポスターデザインを外注した場合の価格 の相場
甲第4号証 住民監査請求書および 添付資料一式
・作成日時に住民監査 請求書を提出したこと
・被告が意図的に候補者の名前が分からないよう一部黒塗りを行い,公費支出の透明性を欠く 対応を行っていたこと
甲第5号証 住民監査請求における陳述用資料
・選挙ポスターの公費負担額が実勢価格と乖離 していること(説明)
甲第6号証 鏡野町職員措置請求に係る監査結果
・被告が,原告の住民監査請求を棄却 しこと
<第一準備書面>
令和8年(行ウ)第14号 公金支出金返還請求事件
令和8年 9月 28日
岡山地方裁判所第1民事部1合Ⅰ係 御中
第一 【甲6】を発出した監査委員の人選に関して
【甲第6号証】(4頁16行目より,第5 監査委員の除斥)によると,
監査委員長(議員枠)は,地方自治法第199条の2に該当するため排斥 となっており,監査委員1名で監査を行っている。
監査を行った委員 赤木郁夫は【甲第7号証】,【甲第8号証】によれば元鏡野町職員であり,鏡野町役場の総務課長・会計管理者などを歴任した「公費支出の中枢にいた人物」である。
そのような人物が,役場内部の不正を独立して監査できるとは到底考えられない。
以上,
<被告答弁書>
令和8年9月29日
〒700-0817 岡山市北区弓之町2番15号
弓之町シティセンタービル6階
小林裕彦法律事務所(送達場所)
被告訴訟代理人
(担当)弁護士 小 林 裕 彦
弁護士 藤 井 秀 孝
(担当)弁護士 丸 屋 祐太朗
弁護士 越 智 量 平
弁護士 石 井 一 弥
弁護士 岩 田 尚 浩
(担当)弁護士 中 尾 一 清
弁護士 中 村 慶 人
弁護士 桑 原 啓
第1 請求の趣旨(令和8年7月27日付け訴状訂正申立書による訂正後のもの)に対する答弁
1 本案前の答弁
⑴ 本件訴えをいずれも却下する。
⑵ 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
2 本案の答弁
⑴ 原告の請求をいずれも棄却する。
⑵ 訴訟費用は原告の負担とする
との判決を求める。
第2 本案前の答弁についての理由
1 請求の趣旨第1項について
地方自治法第242条の2第1項第4号に基づく訴訟では、「当該職員」に損害賠償等の請求をすることを当該地公共団体の執行機関等に対し求めるものであるから、
損害賠償等の請求対象となる「当該職員」の特定は不可欠である。
「当該職員」の特定がされていなければ、同条第7項による訴訟告知の対象者を確定することもできない。
しかるに、原告は、損害賠償等の請求対象となる「当該職員」を「当該公金支出に関与した鏡野町職員」と抽象的に記載するのみで、具体的な記載をしていないから、「当該職員」の特定がされているとはいえない。
よって、請求の趣旨第1項に係る訴えは、損賠償等の請求対象の「当該職員」が特定されておらず不適法であり、却下されるべきである。
2 請求の趣旨第6項について
住民訴訟を適法に提起するには、少なくとも、その対象とする財務会計行為又は怠る事実について、あらかじめ住民監査請求を経なければならない(地方自治法第242条の2第1項)。
しかるに、原告が行った住民監査請求は、令和7年3月30日施行の鏡野町長選挙及び鏡野町市議会議員選挙における選挙運動用ポスター作成費の支出を対象とするものであり、本件訴訟に要した費用に関する事項はその対象とされていない。
したがって、請求の趣旨第6項に係る訴えは、住民監査請求を経ていない事項を対象とするものであり、住民監査請求前置の要件を欠く。
よって、請求の趣旨第6項に係る訴えは不適法であるから、却下されるべきである。
第3 請求の原因に対する認否
おって認否、主張する。
第4 被告の主張
おって主張する。
第5 その他
初回期日は,都合により出廷できないため,擬制陳述とすることを希望する。
以上
令和8年9月30日
被告代理人は、地方自治法第242条の2第7項の規定により、裁判所に対し、業者4社へ訴訟告知を行うよう文書提出
<原告第二準備書面>
令和8年 10月 8日
以下、被告答弁書について反論を述べる。
第1 請求の趣旨第1項について(被告答弁書2頁12行目より)
※以下、〇号(〇には数字が入る)とは地方自治法 第242条の2項の〇号を意味する。
被告は、3号と4号を混同している。3号は「当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実」に対しての請求である。
一方、4号は「行為の違法性」を争う訴訟である。
以上の観点から、以下反論を述べる。
(1)4号は「行為」を争う訴訟であり、職員名は要件ではない。
4号は違法な財務会計行為の有無を争う訴訟であり、原告が特定すべきは「行為」であって「職員」ではない。
よって、職員名の特定は原告の訴訟要件ではない。
(2)職員に損害賠償請求するかどうかは被告の判断である。
本訴は「自治体に対して職員に損害賠償請求をせよと求める訴訟」であり、職員に求償するかどうかは被告の判断である。
よって、原告が職員名を特定する必要はない。
(3)地方自治法第242条の7項の告知義務は被告の義務である7項の告知義務は被告の義務であり、原告の訴訟要件ではない。
告知対象者を特定できない場合は、被告が調査すれば足りる。
(4)職員名の特定は原告の要件ではない。
実務上、4号で職員名を記載しないのが通常である。
実務においても、4号訴訟では職員名を記載しない例が多数であり、行為の特定のみで適法とされている。
よって、被告の主張は住民訴訟の構造を理解していない。
第2 請求の趣旨第6項について(被告答弁書2頁23行目より)
請求の趣旨第6項に係る訴えは適法であり、被告の「監査請求を経ていない」との主張は誤解している。
以下、理由を述べる。
(1)監査請求と訴訟の対象は同じ支出行為である
原告が監査請求で問題にしたのは、鏡野町が選挙運動用ポスター作成費を支出した行為である。
本件訴訟も、その支出行為の違法性を問うものであり、対象は同一である。
したがって、「住民監査請求を経ていない」という被告の主張は事実に反する。
(2)住民監査請求と同じ財務会計行為である
地方自治法第242条の2第1項において、訴訟前に監査請求を経ることを求めているが、それは「同じ財務会計行為」についての監査を経ることを意味する。
本件では同じ支出行為を対象としているため、要件を満たしている。
(3)被告の主張は監査請求の範囲を狭く解釈している
住民監査請求書には「選挙運動用ポスター作成費の支出」と明記されており、その支出に関する費用全体が監査対象である。
したがって、訴訟で争っている費用もその一部である以上、住民監査請求を経ている。
以上、